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どうしてあんなことをしてしまったのだろう。

気付いたら、ぼくはみどりを抱きしめていた。

自分のなかに、違う自分がいるように思えて、こわかった。

そして、みどりは「ばいばい」といって去ってしまった。

もう、ほんとうに合えなくなってしまうのだろうか。

ぼくは寝返りをうちながら、なんどもなんども激しく後悔した。

「ああ…もう」

でもあのときのみどりは、ほんとうにおかしかった。

なにかに怯えているような瞳。

そしてぼくがふと抱いた衝動。そんな衝動、今までのみどりにはまったく感じなかったのに。

みどりが消えてしまう、なんて。

一体、みどりはどうしてしまったのだろう。

考えてみると、抱きしめた時のみどりの声は震えていたようなきがするし、ぼくを拒否しなかったのもおかしい。

わからないことだらけで、いらいらする。

自分にも激しく後悔はしていたけど、自己嫌悪とかは、ふしぎと感じなかった。



目を開けると、もう朝だった。

いつのまにかぼくは寝てしまっていたらしい。

ぼくはそのままもぞもぞと起き上がって、時計を確認すると、ふとんから這い出した。

「しろ、あなたきのう服あらってないでしょう」

リビングに入った途端、母の甲高いこえがして一瞬からだがこわばった。

そういえば、きのう洗濯をしていなかった。

「ごめん」

「もう。ちゃんとしなさいよ」

「うん」

目をこすってみると、視界がぼんやりしておぼつかない。

ふらふらの足取りでリビングに踏み出すけれど、ぐらついて、みどりの声が耳から離れない。

ノイズ、雑音もぜんぶ、ぜんぶまじって神経細胞さえも凌駕した。

「…しろ?」

母の声ではっと現実へ引き戻された。

パジャマの下に、たった数秒だけですごい汗をかいていた。

「ごはん、たべて」

母に促されるままに椅子にすわる。

するとそこにはすでにしゃけとごはんがおいてあった。

.

痛い

いたい

.

気付かないようで、こころがいたい。

「いただきます」

きょうはぼくからたべ始めた。

なにかしてないとこころのなかの痛さにおしつぶされそうで、こわかった。

みどりが消えそうになったときと、同じ。

閉じこめていないと、なにかが消えてしまいそうで。





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