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逢坂の表情がぱっと明るくなる。
逢坂も逢坂なりに悩んでいたのだろう。べつに責めるべきことではない。
それ以上に、ぼくのきもちが逢坂に伝わったことがすごくうれしかった。
「いいよ、これからとりもどせれば」
ぼくはそうつけたして、たっと走りだした。
逢坂がまてよう、といいながらあわててついてくる。
朝になびく、みどりいろの風がぼくたちをやさしくつつんでいた。
人生なんていやなことばかり、そうつぶやいていたぼくがいた。
でももう、それも終わるかもしれない。
どんなことでも、受け入れるつよさを、ぼくは欲しかったのかもしれない。
そこまで思って、ぼくは疾走することををやめた。
土手のうえの若葉が、ふんわりとぼくの足を受け止める。
肩がゆれて、何回も何回もくうきを吸い込む。
逢坂もやっとぼくに追いついて、肩でこきゅうをしていた。
「あは」
まぬけづらで笑って逢坂をのほうむくと、逢坂も息をきらしながら、けけけと笑った。
「なかなおり、だね」
ぼくは手をすっと差し出すと、逢坂は鼻っ柱をゆびでこすってそれに応じた。
つなぎあわせた手から、逢坂のあたたかさがゆっくりと伝わってくる。
「またよろしく」
逢坂はにっと笑って、まっすぐにぼくを見据えた。
ぼくはその瞳から、もう目をそらさなかった。
みどり、すべては彼女から変わった。
そしてぼくは気付きはじめていた。みどりへの、すなおな想いに。