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学校までのみちのり、朝早すぎて、ひとかげもまばらだ。
携帯をいじくりまわしながら歩く高校生、忙しそうに走っていくサラリーマン。
ともだちとこづきあいながら笑う小学生。
すべてが朝のひかりをあびて、まぶしくひかっていた。
ぼくのすがたは、あのひとたちにどううつっているのだろう。
ぼくのすがたも、あんなふうにまぶしいのだろうか。
そこまで考えてから、ぼくは考えることをやめた。
ひとからどう思われようが、ぼくはどうにもならないからだ。
ぼくがぼくであること。
この事実はどんなことがあっても、けして変わることのないものだ。
「おはよう」
ふと、後ろから声をかけられてふりむくと、そこにはなつかしい親友がいた。
「逢坂」
ぼくが彼のなまえををよぶと、彼はすこしだけ照れたような表情になった。
そしたら彼も、ぼくのなまえを確かめるように呼んだから、ぼくはうん?とへんじをした。
「ごめん、さわざき」
「なにが」
「おれ、おまえのことさけてた」
「しかたないよ」
逢坂はしゅんとしているようで、声にいつもの張りがない。
「おこってる…よな」
ぼくはその問いかけに答える前に、空をみてすうっと息を吸いこんだ。
そして、やわらかくほほえんで、「おこってないよ」と伝えた。
ひとに、自分のきもちを伝えることは難しいけれど、ぼくは笑って伝えようと思った。
そうすれば、きっとつたわると、今のぼくにはなんとなく、信じることができた。