表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/34

19

寝るまえにはもう熱はさがっていた。

母はそれをみて、ひとまず胸をなでおろしたようだった。

「かあさん」

母をよぶと、彼女は内職のうでをとめてこちらをむく。

母のかみのけにはいつのまにか、白いものまで混ざっていた。

「…ありがとう」

「なにいってるの。親が、こどものめんどうみるのはあたりまえでしょ」

くすくす笑ってから、母はまた内職へと視線をもどす。

「…とおさんと…どうするの」

母の内職の手がぴたりととまった。

聞きたくはなかったけれど、いつかは解決しなければいけないことだ。

ぼくはどきどきと脈打つ心臓を落ち着かせたくて、おおきく息をすいこんだ。

母もおなじようで、肩が上下にひとつ、揺れた。

「わからない…でも、もうだめなのよ」

母がそういうということは、もうきっとほんとうにだめなのだろう。

今まで築き上げてきた家族、というものをかんたんに壊せるくらい、父と母の確執は深かったのだ。

でも、もう仕方がない。

母も、ぼくも、もう十分に苦しんだ。

「そう、しかたないんじゃない」

母の表情はみえなかったけれど、きっとぼくたち、すごくかなしかった。

彼女の背中は、小刻みに揺れていた。

父の愛をつなぎとめれなかったこと。

おおきな問題を前にしてもなにもできない無力さ。

すべてが、すごくすごくかなしかった。

せめて、しあわせな家庭でありたかった。


でも、もうきっとぼくたちはばらばらになる。

遅かれ早かれ、それはきっと必然だった気がする。

ぼくたちがすこしだけ、早かっただけなのだ。


おわりは、あまりにあっけないものだった。







評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ