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朝になっても熱は冷めなかった。

意識は朦朧としていて、起き上がることもできない。

「はい、39度8分ね」

母がそういってつかい終わった体温計をケースにていねいにしまう。

さっき雑炊を食べたので空腹は感じなかった。

「がっこう、やすみのれんらくいれたから」

ぼくはそれにうん、とだけ相づちを打つ。

すると母は安心したような表情になって、すこしだけ笑った。

「じゃ、かあさんかいものにいってくるね」

「うん」

エプロンを小脇において、母はいそいそと出ていった。

扉がしまる音をきいて、ぼくは大きなため息をつく。

すると頭がまたぐわんぐわんとして、気持ちわるかった。

でも内心ぼくはすこしだけ安心していた。

みどりにあいたくなかった。

あいたくない、あえない口実ができたからだ。

もう、これ以上ぼくのこころをみだされたくなかった。

今までとちがう自分になっていく、自分がこわかった。

空が青いのが窓越しにつたわる。

せみの鳴き声とか、小鳥のさえずりとか、雑音ばかりが胸へと飛びこむ。

そのすべてが、どうしてか、みどりを感じさせられた。

ぼくは耳をふさいで、ふとんへと逃げ込んだ。

怖かった。恐ろしかった。

「やめてくれ」

もう、これ以上ぼくをくるしめないでくれ。

でもどうして、こんなにも君を思い描いてしまうのだろうか。

君の笑顔、泣き声、囁く声、すべてが、すべてが恋しかった。

会いたくないのに、恋しかった。







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