12
公園について、どさりと寝転がったみどりは、真っ青な空に手をありったけのばして
「おほしさまあ」
とおおきな声で言った。
「いま、お昼なんですけど」
「しろちゃん、しらないの?」
「なにが」
ぼくがしかめつらをしてみせると、みどりはさぞかしたのしそうに笑った。
「おひるでも、お星さまはかがやいてるんだよ」
疑いなんてしらない、まっすぐな無垢のひとみがぼくを見据えた。
茶色がすこし混ざった、きれいなひとみだった。
すこしだけ、胸が高鳴りを覚える。
「あたしも、しろちゃんも。ずっと、かがやいてるの」
そのきゃしゃな胸に手をおきながらみどりは言った。
かみのけが風にふんわりとさらわれる。
「どうしてかがやくんだい」
「じぶんをね、みつけてほしいから」
「どうして」
「さびしいからだよう」
みどりはそういって、またゆっくりときれいに笑った。
そのことばにはまったく飾りたてたものがなかった。
だから、まっすぐぼくの心にふかくふかく響く。
「みどりも、さみしいの?」
問いかけると、みどりはすこしだけおどろいたような顔をする。
そんなみどりの顔をみたのははじめてだった。
不安とか、かなしさとか、たくさんの感情が入り雑じった顔だった。
鳥が頭上できゅるる、と世界に囁くように啼く。
みどりはそれをまぶしそうに見つめていたけれど、なにも言わない。
ぼくがちらりと盗みみたその表情は、こころなしかすこし、さびしそうだった。
葉っぱのやさしさ、太陽のひかりかがやく粒子、空気のきれいなこきゅう。
すべてが今のぼくにはまぶしすぎて、ぼくはひとみをゆっくりと閉じた。