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きのうのこともあって、おそるおそる扉をあけると、そこに母の姿はなかった。
「…かあさん…?」
呼んでみても、返事はない。
どこかへ出かけたようだ。
でもきのう言ったことに対する後悔が、ぼくの中にあったからすこし安心した。
食事は机の上においてあった適当なものですませて、ぼくは外へでた。
早足で外にでてみると太陽のひかりがまぶしかった。
ぼくはそれを避けようともせず、ただ早足で歩いていく。
みどりの顔、みどりの声、すべてに早く逢いたかった。
そうすればきっと、どんなぼくであろうと、みどりはやさしく受け容れてくれるから。
そう思うと、自然に顔がほころんだ。
両親のことも、色んなことも、今はどうすればいいのかもわからない。
でもみどりに逢いたい、ということだけははっきりとしていた。
「しろちゃん」
幻覚かもしれない。
後ろからみどりの声がした。
やさしくて、甘ったるいきれいな声。
「しろちゃあん」
幻覚にしてはあまりにはっきりとしていた。
ぼくは後ろを向く。
そこにはガードレールを危なっかしく歩く、ヒョウ柄があった。
「まあた、あえたね」
きのうと同じで、みどりはゆっくりとほほ笑んだ。
ヒョウ柄のはでなワンピースがひかりを浴びて、かがやく。
夢でもいい、ぼくは確かにそう思った
「きょうはワンピース?」
「うん」
みどりはまたうれしそうにきゃらきゃらと笑った。
その笑い声はまるで水のようだとぼくは思った。




