ヘンゼルとグレーテルかも知れない話
ある所に貧しい一家がいました
あまりに貧しく、食べるものもままならなかったので口減らしに子供二人を森のなかに置き去りにしました
これはその置き去りにされた子供二人のお話です
「ねぇ兄さん」
「なんだい、グレーテル」
「やっぱりこれ置き去りにされてるんじゃなかろうか」
「…薄々そうじゃないかと思ってたよ。これで57回めだもんな。迷子になるの」
「最近なんか自力で帰る度にお母さんたちの顔がこわばってたものねぇ」
「どうせ帰ってもまた置き去りにされるだろうし…どうしたものか」
「そういえばさ、ここの森結構大きいよね。ちょっと探検してみない?」
「探検か…楽しそうじゃないか!」
「決まりだね!」
そんなこんなで兄妹は森を探検することにしました
そして探検すること約30分…
「あ、なんかいい匂いする」
「ほんとだ!でも何の匂いだろう?」
「ちょっと行ってみようよ!」
匂いを辿って行くとそこには少し汚れた一軒家がありました
中に入るとおじさんが一人、鍋に向かっていました
「おっ 珍しいお客さんだねぇ」
「おじさん!このいい匂い何?」
「よく聞いてくれた!これはな、ラーメンっていう食いもんさ!」
「美味しい?」
「ったりめぇよぉ!ほっぺが落ちて地面にめり込むくれぇだ!」
「「わー…」」
おじさんの話を聞いて朝から何も食べてなかった二人のお腹がなってしまいました
「嬢ちゃん達、腹減ってんのかい?」
「うん」
「じゃ、おっちゃん特製ラーメン食ってけや」
「でもお金が…」
「ばーろぃ、ちきしょうめ!腹すかせて泣いてるるガキから金むしりとるほど俺ぁ鬼じゃねぇよ!」
「な、泣いてないもん!でもそれじゃあ…」
「金の代わりに!ちょいっと皿洗いでもしてくれりゃあ十分だ」
「ほんとに!?するする!!な、グレーテル!」
「うん!」
粋なおじさんの心遣いでラーメンを食べられることになった兄妹
ワクワクしながら待っているとおじさんが湯気を立てる丼を持ってきた
「ほれ!おっちゃん特製味噌ラーメンだ!」
「わーい!美味しそう!」
「いっただっきまーす!!」
パキッと割り箸を割って麺をすする二人
そしてスープを飲んだ時グレーテルが何かに気づいた
「これは…牡蠣?」
「!…こいつぁ恐れいったぜ 嬢ちゃんよく気がついたな。そうさ、牡蠣のエキスを入れてるんだ
隠し味にな」
「なるほど…それによってスープが深みを増している、ということですね?」
「坊主もなかなかの舌をしているようだな、…どうだ、俺に弟子入りしてみないか」
「弟子?」
「ああ、このスープの隠し味を一発で見ぬいた奴は初めてだ。気に入ったぜ」
「兄さん、私…弟子入りしたい」
「へへっ お前ならそう言うと思ってたよ。俺もだ」
「よっしゃ決まりだな!早速皿洗いからやってもらおうか!」
「「はい!師匠!」」
こうして置き去りにされた兄妹はラーメン屋のおっちゃんに弟子入りしましたとさ
それから10年後、修行を終えた兄妹は独り立ちし、秘伝のスープで世界に名を轟かせることになりました
めでたし めでたし
魔女なんていなかった