パセリの悪魔
掲載日:2026/08/31
パセリの種は、芽吹きの許可を悪魔に七度問うという。
悪魔は自由と混沌を好むが、契約には厳に従うもの。
今日もまた、契約に従いパセリの種の声を聞く。
芽吹きの許可を。
一度目。まだ早い。
芽吹きの許可を。
二度目。気温が合わぬ。
芽吹きの許可を。
三度目。水が足りぬ。
己が産声を、六度にわたり留められるパセリの種。
悪魔は契約に従い、六度拒否をする。
七度目の問いにて、ついに芽吹くことを許されるパセリ。
悪魔は、機をみて正しく許可を出す。
今宵もまた、パセリを手にする悪魔。
色つや、かたち、香り、味、込められた栄養。
パセリの悪魔は、香りひとつで正しく把握する。
香りが良い。良い出来だ。勤勉の証だ。見事なり。
色つやが良い。知恵を凝らした証だ。見事なり。
味が良い。代々の教えを守る証だ。見事なり。
見た目は悪いが栄養に富む。虚飾を排した本質の一端。見事なり。
味も栄養も落ちた。かつての栄光は見る影もない。
なれど、老いてなお己が職責を全うする姿、見事なり。
土を手入れせず、雑草も生え放題。しかして、力強い生命を感じる。原初の姿を呼び戻す試み。見事なり。
此度もまた、良き実りと、悪魔は頷く。
契約に従い、勤勉なる者たちに褒美を申請する。
次もまた、良き実りがもたらされるようにと。




