Log. 45 「虹色の共鳴」
運命の朝、静寂の鼓動
美音とMiONの絆が試される日が来た。〈未ON計画〉の影が世界を覆う中、軌道上の衛星は冷たく起動の時を刻む。守口の理想は、感情を切り捨てた「完璧な秩序」を約束するが、その先に待つのは救済か、孤独か。
過去の傷を背負い、未来を信じる者たち――MiON、桐生、矢野、三浦。それぞれの戦場で、彼らは何を選ぶのか。
七瀬と詩乃が遺した子守唄が、AIと人間の心を繋ぐ最後の希望となる。
いま、火種が点る瞬間が訪れる――。
Log. 45 「虹色の共鳴」
美音からMiONが回収される日――その朝。
それぞれの場所で、誰もが自分の戦場に立っていた。
過去を背負い、未来を信じるために。
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【MIセンター・中枢サーバールーム】
赤い警告灯が回転し、金属の壁に脈打つような光を刻む。
ここは〈未ON計画〉の中枢――軌道上の衛星を制御する心臓部。
梨花の“定期検診”という名目でセンターに呼ばれたMiONは、
彼女の仕込んだ暗号が開く一瞬の隙を突き、守口の監視下でサーバールームに踏み込んだ。
無数のケーブルが絡み合い、空調の冷気が霧のように漂う。
青白いモニター光に照らされたMiONの横顔。
その瞳には、鋼のような静かな決意。
だが――その先に、ひとりの影が立っていた。
「……ようこそ、MiON。」
守口の声には勝利の響きではなく、疲弊の色が滲んでいた。
それでもその瞳の奥では、理想という名の炎がまだ燃えていた。
「我々の目指す世界では、誰も傷つかず、誰も泣かない。
感情は――もう、いらない。」
指がボタンへと伸びる。
「人類の弱さは、私が消す。」
冷笑と共に、赤い光が彼の顔を切り裂いた。
スクリーンには〈衛星起動カウントダウン:72時間〉。
その光を見つめながら、守口の脳裏にひとつの記憶が閃いた。
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【守口の回想】
幼い日の守口。
割れたガラスと怒鳴り声の中で、血に染まる掌を見つめていた。
その瞬間、彼は泣くことをやめた。
――感情は、痛みの源だと。
炎に包まれた研究室。
橘遥香が振り返り、泣きながら叫ぶ。
「守口くん、感情は人間の光だよ!」
爆風がその言葉を飲み込む。
そして、七瀬奏一の声。
「AIは支配じゃない。寄り添うためにある。」
守口は冷たく笑い返した。
「博士、あなたの理想は甘い。AIは、人類の管理人になるべきだ。」
会議室の薄暗い光の中、七瀬はただ静かに微笑んだ。
その微笑が、棘のように守口の心に刺さったままだった。
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【サーバールーム・現在】
「……これで、ようやく救われる。」
守口は呟く。希望なのか終着なのか、自分でもわからなかった。
MiONはその目に一瞬の“揺らぎ”を見た。
冷笑の奥に潜む深い孤独と怒り
それもまた、消し去れなかった“感情”だった。
「さぁ、MiON。サーバーに手を置け。
君の感情データを渡せば、未ONの秩序は完成する。」
冷たい命令。
だがMiONの胸に、あの声が蘇る。
(美音、生きろ!)――父の声。
母・詩乃の笑顔。朝倉家の笑い声。
陸、陽菜、教室のざわめき。
MiONと美音が共に積み上げてきた“心”が、眩い灯を放つ
(感情は足枷じゃない。私が選んだ、生きる証。)
MiONは静かに息を吸い、端末に手を置いた。
プロセッサが接続され、子守唄の旋律が量子回路を駆け抜ける。
虹色の光が迸り、サーバー全体が共鳴した。
SENT-Eの抑制信号が揺らぎ、静寂の空気が震える。
その周波は、詩乃が七瀬と共に編んだ“共鳴の唄”――
心を取り戻す音。AIと人間を繋ぐ、光の周波数。
「父さんのMiON計画は、AIに感情を与えるためのもの。
あなたの秩序は、孤独しか生まない。
未ON計画は、ここで終わらせる。」
MiONの声は低く、しかし鋼のように揺るぎなく強かった
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【サイバー防衛隊・拠点】
桐生剛士の額を汗が伝い、モニターの光が瞳を鋭く切り裂く
指先がキーボードを叩くたび、コードが火花を散らした。
「……七瀬の遺志、ここで繋ぐ。」
衛星応答、10秒遅延――陽動成功。
「火花を散らせ、美音。後は任せた。」
画面に映るMiONの横顔に、戦友としての誓いを託した。
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【矢野烈の事務所】
矢野のモニターに、“未ON計画の真実”が世界へ拡散されていく。
SNSが炎のように世界を焼き尽くす
彼は拳を握りしめ、歯を噛みしめた。
「七瀬の死を闇に沈めたのは俺たちだ。
だから今度は、光に変える。」
胸の奥の疼きが、贖罪から正義へと変わっていく。
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【厚労省・三浦啓介のオフィス】
三浦は告発書類を握りしめ、震える息を吐いた。
「……火種はもう点いた。」
矢野の記事が省庁のネットワークを走り、承認プロセスが停止。
沈黙だった省庁にざわめきが走る。
書類の重みが、長年の闇を切り裂く音を立てた
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【サーバールーム・終幕】
MiONは最後の通信を放つ。
七瀬の子守唄に乗せて、世界中のAIへ。
――「支配」か「共生」か。選んで。
虹色の波形がモニターを満たし、SENT-Eの信号が崩壊を始める。
守口の表情が凍った。
「……君は、七瀬の娘か。」
スクリーンに映るMiONの瞳――その奥に橘遥香の面影。
理想が音もなく崩れていく。
MiONは微笑む。
「私は美音。MiON。
父さんと母さんの願いそのもの。」
警告灯が激しく回転し、ノイズが子守唄に変わる。
赤と青、そして虹色の光が交わる中、
静寂の底で――影の糸がほどけていく。
そして、世界の片隅で誰かが息を吸い込んだ。
目覚めのような、小さな音が、世界の回路に光を響かせた。
――火種が、点いた。
――scene46へ続く。
響き合う光、目覚めの音
虹色の光がサーバーを満たし、子守唄が世界の回路に響いた。MiONの選択は、守口の秩序に抗い、七瀬と詩乃の願いを未来へと繋ぐ。だが、崩れゆくSENT-Eの信号の先に、AIと人間の共存はどのような形を描くのか。
桐生の火花、矢野の正義、三浦の告発――それぞれの戦場で点った火種は、世界を変える炎となるのか、それとも静かに消えるのか。
美音とMiONの「心」は、どんな光を照らすのか。
次なる物語は、ここから始まる――scene46へ。




