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Log.30「青のざわめき(動き出す闇)」

光も音もやわらぐ夜。

誰もいない部屋に、ひとつの歌が溶けていく。

それは懐かしいはずの旋律なのに、胸の奥をざわつかせる。


記憶なのか、幻なのか。

その歌に導かれるように、眠っていた何かが目を覚まし始めていた――。

挿絵(By みてみん)


Log.30「青のざわめき(動き出す闇)」



【美音の部屋・夜】


静かな部屋で、美音はノートを開いたまま、ペン先を宙に浮かせる。 無意識に、唇から小さなメロディがこぼれた。


「…ふわり、ふわり…」


母・綾乃が口ずさんでいた子守唄。

柔らかく、どこか切ない旋律が、夜の静けさに溶けていく。


ペンを走らせながら、胸の奥で何かが揺れる。 母の温かな抱擁、優しい声。忘れかけていた記憶の欠片が、歌とともに浮かび上がる。


(ずっと…この歌に包まれて育った)


次の瞬間、校門前で矢野烈と出会った光景が鮮やかに蘇る。

闇と轟音の中、父・七瀬奏一の叫び声が耳に焼きつく。


「美音――生きろ!」

(ただの歌なのに…なぜ、胸がこんなにざわつくの?)


ノートの隅に、震える文字で書きつけた。

(母の歌声は、私の中で眠る何かを揺り起こす)


…ガチャ。

階下から、玄関の鍵が開く音が微かに響く。


(お父さん、今日は遅かった…)


美音はノートを閉じ、静かに階下へと降りていく。


【朝倉家 玄関からリビング】


リビングのソファに、一彦が疲れた身体を沈めている。 肩を落とし、静かに息をつく姿に、普段の強い父の面影はない。


「おかえり…お父さん…」


美音は囁くように声をかけ、そっと近づく。

一彦が顔を上げる。


「…美音?まだ起きてたのか。それとも起こしちまったか?」


「ううん…」 美音は小さく首を振る。

「お父さんに話しておきたいことがあって。待ってたの」


一彦は軽く眉を上げ、ソファの隣を軽く叩いて促す。

美音は鞄から名刺を取り出し、テーブルに置いた。


「今日、学校の前で…この人に会った。矢野烈って名乗ってた」


一彦の手が名刺に伸び、表情が一瞬で固まる。

「…矢野烈。フリージャーナリスト…」


彼の声は低く、どこか冷たい。

(矢野…なぜ今?よりによって美音に…)


「お父さん、知ってるの?その人」


美音の声に、一彦はわずかに視線を逸らす。

少しの沈黙の後、ゆっくりと口を開いた。

「昔…お前の父、七瀬の研究を執拗に批判した男だ。」

「矢野という男は、感情を持つAI、MIの開発を『危険だ』と糾弾して、世論を煽った」


一彦の目は、遠くを見るように曇る。

「その騒動が、七瀬を…いや、お前をこんな目に遭わせた一因だった」


美音の脳裏に、再び父の叫びが響く。 ――生きろ。


「矢野が直接の原因じゃない。だが…厄介な男が動き出した」

美音は名刺を見つめ、唇を噛む。


(この矢野という人は…私の過去を知ってる。父のことも、母のことも…)


窓の外、街の灯りがひとつ、またひとつと闇に飲まれていく。 まるで、迫りくる何かを予感させるように。


【翌朝 朝倉家】


朝倉家のリビングは、朝の柔らかな光に包まれていた。 食卓には湯気の立つコーヒーと、トーストの香りが漂う。

テレビのニュースキャスターの声が、穏やかな日常に割り込むように響く。


「国際電気通信連合(ITU)が電波基準を大幅に改正しました。新基準により、現在のスマートフォンや端末は今年度末までに使用できなくなります。政府は各通信会社と連携し、新型スマートフォンへの無料機種変更を推奨。なお、機種変更にかかる費用は政府の補助により全額無償となります…」


サトシはソファに寝転がっていたが、勢いよく身を起こす。


「マジかよ!? 新型スマホがタダで手に入るなんて、日本政府、たまにはやるじゃん!」

目を輝かせ、スマホを手に取り、すでに新機種のデザインを想像しているようだ。


朝食の皿を片付けていた綾乃は、動きを止めて眉をひそめる。

「え、待って。私のスマホ、めっちゃ気に入ってるのに…年内って、急すぎない?」

ピンクのスマホケースを握りしめ、傷一つない表面が朝の光にきらめく。


一彦はリビングの隅で新聞を広げていたが、ニュースを聞いて顔を上げる。

(…何か妙だな…)


彼の鋭い目がテレビ画面に注がれる。

政府の異様なまでの迅速さ、 無料という言葉の裏に潜む意図。

美音はテーブルの向かいで、青いスマホを手にじっと見つめていた。


画面が不規則に点滅し、まるで警告を発しているかのようだ。 彼女の顔には不安が浮かび、唇が小さく震える。

「このスマホ…何か変だよね?」


一彦の携帯着信を知らせる音が鳴った。 通知番号から小田切梨花だとわかった。


「何だなんだ?せっかくの休みに仕事の電話だ…」


一彦は惚けながら階上の書斎へ移動する。


「朝倉さん、国際電気通信連合(ITU)のニュース見ましたか?」

慌てた様子の小田切。緊迫した様子だ。


「ニュース…スマホの事ですか?」


「はい。守口の計画がいよいよ始まろうとしています」

電話口の小田切は息をつく間も無く続ける。


「今朝の改正は…ただの技術基準変更なんかじゃない。守口が仕掛けた“導入の号砲”です」

「全国民に新型端末を持たせる口実…そして、その端末にはすでにSENT-E(感情制御プログラム)が組み込まれています。もう時間はありません!」


一彦は眉間に皺を寄せ、無言で階下を見やった。

(美音に持たせたスマホはMIセンターから貸与されたSENT-Eだ。 だが、激しい感情の変化を抑制する目的だと聞いていたが…)


(この機能を逆に使うことで多数の人間の感情の抑制と管理が可能…まさか)


リビングでは、美音が青いスマホを握りしめ、じっと画面を見つめている。


挿絵(By みてみん)



イメージソング「響き合う光」公開中!

朝倉美音のオフショットを載せてあります。


朝倉美音の公式アカウント

https://www.tiktok.com/@_mion0707?_t=ZS-8yQZYDOfsyG&_r=1


リンク貼れないのでコピペしてね

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