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Log.27「未来を紡ぐ午後」

放課後の教室に差し込む西日が、机や椅子の影を長く伸ばしていく。

それぞれの胸に抱えた夢や迷いが、ふとした瞬間に形を変えて現れる。

選ぶのは日常か、それとも未知への一歩か。

そして、誰かのさりげない一言が、もう一人の心を揺らす。


交わる視線、試される想い。

その奥で、静かに未来を動かす影が動き始めていた——。


挿絵(By みてみん)


Log.27「未来を紡ぐ午後」



【放課後の教室】

西日が教室の床に斜めの線を描き、机の脚と椅子の影を長く伸ばしている。

私は窓際の席から、その光景を静かに眺めていた。


「陽菜ー」

笑い声とともに、平野芽衣と一軍女子たちが白石陽菜の机へ歩いていく。彼女たちの足音は、まるで教室の空気を独占するみたいに軽やかだ。


陽菜は、ふと教室の隅で部活の準備をしている陸に目をやった。

陸は手際よくバッグをまとめていて、陽菜たちの話し声にはほとんど気を払っていない様子だった。


「これから、久しぶりにみんなでカラオケ行くんだけど、陽菜ももちろん行くでしょ?」

その問いに、陽菜は笑みを作ろうとして…やめた。ほんの一瞬、伏せたまつ毛の影が頬に落ちる。


「芽衣、あなたにはちゃんと言っておきたかった」

顔を上げた陽菜の瞳は、いつもの甘さを消していた。

「私、本気で女優を目指すことに決めた」


芽衣の瞳が大きく見開かれる。

「芽衣は、私の初めてのファンだから。そういう応援してくれる人がいる限り、挑戦したい」

その瞬間、芽衣の中に眠っていた何かが弾けたのが、私にもわかった。彼女の視線の奥に、テレビの中で見た幼い日の陽菜が一瞬だけよみがえっていた。


「じゃあ、もうウチらとは連めないってこと!?」と他の一軍女子が声を荒げる。

芽衣は一歩、前に出た。

「違うよ。陽菜は…もう一度、自分を目指し始めたんだよ」

「カラオケやファミレスで過ごす時間は減るかもしれない。でも、その分…夢のために時間を使うんだよ」


「…芽衣…」

陽菜の声がかすかに揺れる。

「わかったよ陽菜…応援す——」

言いかけた芽衣は、陽菜のまっすぐな瞳を見て言い直す。

「ウチはずっと昔から陽菜を応援してるし、これからも絶対変わらない」


その場の空気が、少しだけ温かくなった気がした。

私は机の縁をそっと撫でながら、二人の背中を見つめる。

(陸、陽菜…挫折した夢を、もう一度追い始めた。私も…こんなふうに強く、何かを選び取れるだろうか)

(私は、どこへ向かえばいいのだろう。今、この先に…何を見つけられるのだろう)


教室の窓の外では、夕陽がゆっくり沈んでいった。

その色は、私の胸の奥の、まだ名前のない感情を静かに照らしていた。


-----------


「みおぉ〜ん」

甘くてちょっと軽い調子で呼ぶ声が教室の空気を切り裂く。河崎優馬だ。


「一緒に部活行こうぜ」


陸はバッグを背負ったまま眉をひそめる。

「部活行くのに、なんでわざわざ迎えに来るんだよ」


優馬は口元だけで笑い、視線を一瞬だけ陸に流した。

「なんでって?」


わざと間を置き、教室のざわめきが静まる瞬間を待ってから——

「俺たち、付き合ってるからな」


優馬の視線が陸へ突き刺さり、陸はそれを受けても顔を逸らさなかった。

美音の胸の奥で、形のわからない熱が膨らんでいく。


その言葉は軽く投げられたようでいて、狙い澄ました矢のように教室の空気を射抜いた。

美音も陸も、そして陽菜や芽衣も、一斉に顔を上げる。教室の視線が一点に集まり、空気が一瞬止まる。


美音は慌てて声をあげた。

「優馬くん!まだ私、返事してないでしょ」


優馬は肩をすくめ、余裕の笑みを浮かべる。

「そうだっけ?」

軽く言いながらも、その目は美音から陸へと流れ、反応を逃さない。

「でもさ…結局そうなるだろ。だったら、先に言っといても損はないよな」


その瞳は挑発というより、試すような光を帯びていた


陽菜と芽衣が顔を見合わせ、小声で囁く。

「え!ちょっと、美音、告られたの?」

「…うん…なのかな…?」と美音は微かに頬を染める。


陽菜はふっと胸を撫で下ろすように息をついた。

(ああ、やっぱりそうか。美音と陸は両思いなんだ。そう思ってたから、なんだかホッとした)


教室の女子たちの間で、恋の話題が一気に沸き上がってテンションが高まる。


一方、その様子を見ていた陸は心の中でつぶやいた。

(…優馬の奴、美音に告白したのか…)

(なんで、俺はこんなにイライラしてるんだ?)


「先に行くわ」

陸は精一杯無関心を装い、ぎこちなく教室を出て行く。


その背中を見送る美音の胸は締め付けられた。

(なぜ、こんなに胸が苦しいの?)


鞄の中で美音の青いスマホが妖しい光を点滅させていた。


――時を同じくして、別の場所で、未来を動かす者たちの視線が交錯する。



【MIラボ・守口のオフィス】


薄暗い室内。青白いモニターの光が、静かに守口の横顔を照らしている。

壁際では、古い空調が低く唸り、電子機器の微かな熱気と金属の匂いが漂っていた。

データの流れを追う視線は微動だにせず、時折、指先がデスクの上の資料をゆっくりなぞった。


画面の向こうから政府関係者の声が響く。

「守口さん、未ON計画の進捗状況は?」


守口は椅子の背から体を起こし、淡々と答える。

「予定通りだ。人類は、もうすぐ新しい時代へ踏み出す」


「しかし——感情の制服は個人の人格を侵害する恐れがある」

その言葉に、守口はわずかに目を細める。指先が資料の端を押しつぶすように曲がった。


「人格?」短く吐き出し、間を置く。

「秩序を守るために削ぎ落とすものを、人は犠牲と呼ぶ。だが私は…進化と呼ぶ」


関係者がさらに問う。

「具体的に、人類の感情抑制と制御はどのように行うのか?」


守口は設計図データを投影し、SENT-Eを説明した。


「SENT-Eはスマホから人間に聞こえない音を発し、脳に感情抑制プログラムを組み込む。日常の感情を監視・管理し、朝倉美音で実験済みで良好な結果を得ている。」


SENT-Eは人間の感情を抑制・制御する装置で、美音の感情データをMIラボに集積。改良版で感情をコントロールすると守口は説明した。


彼は淡々と続ける。

「この機能を全世界のスマートフォン端末に内蔵させる。世界人口の58.4%から90.7%をカバーできるだろう」


守口の眼鏡の奥に眠る無感情な瞳が、一瞬だけ妖しく光る。

「近い将来、人工衛星を使い、地球上の全人類の感情を抑制・管理出来るようになる」


モニター越しに息を呑む政府関係者

…沈黙の後、ゆっくりと静かに低い声で告げる。

「この計画は政府の枠を超えている。失敗は許されない。費用は惜しまない。——成功だけを持ち帰れ」


守口は薄く笑みを浮かべ、モニターの光がその瞳に反射した。

「成功はすでに、手の中にある」


冷たい夜風が窓の隙間から吹き込み、彼の肩をかすめる。

守口の口元に浮かぶその笑みは、温かさとは無縁で、氷のように冷たかった。



【朝倉家・リビング】

静かな夜。温かな照明が部屋を優しく包み込んでいる。

一彦は手元の書類をたたみながら、深い息をつく。

綾乃が心配そうに寄り添い、声をかける。


綾乃

「パパ…何かあったの……?」


一彦は小田切女医から知らされた「未ON計画」の真相を考えていた。

(どうしたら阻止出来る?)


綾乃「パパ!」


一彦は綾乃の声に我に返った

苦笑いを浮かべて一彦は綾乃に顔向ける


「ごめん、ちょっと仕事のことで考えてた」


綾乃「もぅ、冷めちゃったからお茶入れ替えるね。」


お茶を入れ替える綾乃の顔見ながら一彦は思った。


(家族を巻き込む訳にはいかない…)


そして階上の美音の自室に視線を静かに向けた



窓の外の街灯がぼんやりと揺れる中、美音は机に向かい、静かにノートを開く。

ペンを手に取ると、インクの走る微かな音が部屋に響く。

書き進める指先は少しだけ震えていた。


(……陸も陽菜も、みんな自分の道を探している。私は、どこへ向かうのだろう……)


ページにゆっくりと文字が浮かび上がり、美音の瞳にはわずかな迷いと決意が交錯していた。

机の上のランプがその横顔を照らし、影がゆっくり壁へと伸びていく。


窓の外の夜空に、まだ見ぬ明日の色を探すように…



挿絵(By みてみん)

2023年のデータによると、世界の携帯電話契約数は約85億5,176万。

世界人口(約81.6億人)に対する普及率は約104.8%です。

ただし、これは契約数であり、実際に端末を所有する人の割合はこれより低い可能性があります。スマートフォンに限定すると、2023年時点で世界人口の約54%(約43億人)がスマートフォンを所有しています。


携帯端末を使って人間感情をコントロールする守口の「未ON計画」が実施されると

世界人口の58.4%から90.7%が管理制御される事になります。

恐ろしいですね。


イメージソング「響き合う光」公開中!

朝倉美音のオフショットを載せてあります。


朝倉美音の公式アカウント

https://www.tiktok.com/@_mion0707?_t=ZS-8yQZYDOfsyG&_r=1


リンク貼れないのでコピペしてね

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