Log.26「三つの影、交わる夕暮れ」
夜の帳が街を包み込み、三つの物語が静かに交差する。
陽菜の決意は夢へと向かい、陸の想いは揺れ動く。
美音の心は、未知の感情と計算された言葉の狭間で揺らぎ、
そして闇の深淵では、未ON計画の真実が静かに牙をむく。
すべての糸は絡み合い、やがて一つの運命へと繋がっていく。
明かされる真実は希望か、それとも絶望か。
次の扉が、今、静かに開かれる——
Log.26「三つの影、交わる夕暮れ」
【校門前】
校門で陸を呼び止めた陽菜は、一緒に歩き出した。
「陽菜、俺に伝えたいことって何だよ」
「うん…夏休みにみんなで遊園地行った時、ゴンドラで『夢を諦めるな』って陸が言ってくれたでしょ?」
「私…嬉しかったんだよ。でも、あの時はまだ自信がなかった…」
「この間、教室でまた言ってくれたじゃん。『夢をもう一度追うことにした。陽菜も諦めるな』って」
「あの言葉で勇気が出た。私、またオーディション頑張るよ。何度でも…何度でも…」
「…そうか。陽菜、頑張れよ」
「うん。絶叫マシーンにビビるアンタには負けないよ」
「おい、それ関係ないだろ」
2人の笑い声が、秋の夕暮れの空に溶けていった。
【学校のグラウンドの美音と優馬】
一方で優馬の突然の告白に美音は動揺していた。
優馬は軽くポケットに手を突っ込み、ふっと笑った。
「じゃあさ、俺と付き合おうか、美音。
“おともだち”としてじゃなくて、“彼氏彼女”としてな」
言葉は軽く響いたのに、胸の奥が小さく跳ねた。
陸への輪郭のぼやけた想いと、目の前の優馬のはっきりとした言葉が、同じ場所でぶつかって揺れる。
(判断材料不足。本気かどうかも……自分の気持ちも、まだわからない)
頭のどこかで冷静に分析している自分と、
初めて触れる“特別”の予感に足を止める自分が、せめぎ合う。
「……いまは、すぐには答えられない」
一拍置いてから、目をそらさずに続けた。
「優馬のこと、もっと知ってからでいい?」
優馬は笑みを崩さなかった。
それが本気の笑顔なのか、軽いやり取りの延長なのか――
美音には、まだ見分けがつかなかった。
優馬は目を細め、わずかに口角を上げた。
「いいよ。じゃあ、これから知ってもらえばいい」
その表情は、まるで美音の返事をあらかじめ知っていたかのようだった。
優馬はあえてそれ以上何も言わず、歩き出す。
――今日の目的は“答え”じゃない。
ただ、美音の心に自分の輪郭を刻むこと。
そして彼女の視線が俺に集中してくれるようになれば、ますは成功
背中越しの夕陽が、彼の影を長く伸ばしていた。
街灯が一つ、また一つと灯り、街の色がオレンジから深い群青へと沈んでいく。
その夜、別の場所では――
笑い声とは無縁の、重い会話が始まろうとしていた。
⸻
【都内某所 薄暗いカフェの個室】
小田切梨花は、目の前の朝倉一彦に視線を固定したまま、低く声を潜める。
「未ON計画――それは、人間の感情を完全に管理・制御しようとする、国家規模の陰謀です。守口博士は、その先頭に立っています。」
⸻
【小田切の回想】
守口の部屋は静まり返っていた。
カーテンの隙間から射す薄明かり、壁掛け時計の針の音だけが響く。
「…留守か」
健診結果の封筒を置こうとした、その時――視界の端に「MiON」の文字が入った書類が目に止まった。
無造作に積まれた書類の一番上。赤い「重要機密」の印。
ページをめくるごとに、喉が乾く。
──『人類感情抑制管理計画 Project MiON』
各国首脳と大企業CEOの署名。対象:地球上の全人類(一部特権階級を除く)。
E-COREによる感情抑制…争いなき世界。だが、その方法は――。
(…こんな計画、現実に?)
背後でドアが静かに開く音。
「何をしている?」
低く、冷たい声。
振り向くと、守口が立っていた。表情は笑っているのに、瞳だけが動かない。
「中身を読んだか?」
小田切は無言で頷く。
「いいだろう。どう思う? 理想の世界だと思わないか?」
その声は、まるで答えを試すようだった――。
⸻
【守口の語り】
「小田切君、君は戦争やテロがなくなる世界を望まないのか? 貧困も、差別も、憎しみもない世界だ」
守口は机に肘をつき、指先で軽く書類を叩いた。
「人間は感情に振り回される生き物だ。」
守口の低い声が、部屋の空気をじわじわと重くしていく。
小田切は、手の中の健診結果が汗で湿っていくのを感じた。
「愛も憎しみも、突き詰めれば衝動だ。
その衝動が、争いを生み、犯罪を生み、世界を不安定にしている」
守口の声は淡々としているのに、妙な熱を帯びていた。
「感情を均一化し、同じ思想の下で生きれば、誰も傷つかない。誰も裏切らない。
――それこそが真の平和だ」
「…でも、それは…人間じゃなくなる」
小田切が絞り出す。
「人間である必要があるのか?」
守口の笑みは微動だにしない。
「感情を捨てても、生きていける。いや、生きやすくなる。私たちだけは“特権階級”として感情を保持し、世界を導く。それが未ON計画だ」
小田切は背筋を冷たいものが這い上がるのを感じた。
「これは…七瀬博士が目指した人類とMIの共存社会とは真逆の世界です」
「それに、倫理に外れた人権侵害です」
「倫理?人権?」
「我々、科学者がそんなくだらないものに縛られてどうする!」
「我々が新たな神になるのだ!」
守口の迫力に圧倒される小田切
そして美音の健診書類に目をやる
(この子の感情学習データはAIに感情を覚えさせる為ではなく、感情を抑制させる為だった…)
守口はゆっくりと身を乗り出し、囁くように言った。
「君も、その側に立つことができる――選ぶなら、今だ」
【再び 薄暗いカフェの個室】
「ふざけるな!七瀬はこんなことの為に命をかけたんじゃない!」
わなわなと拳を震えさせながら声を押し殺すように言う一彦
小田切が俯きながら悔しそうに話す
「私も七瀬博士のMIの人類への未来の希望を信じてきたのです」
「七瀬博士の思想,信念と反する計画なんて許せません」
「しかも、お嬢様の美音さんまで実験代に利用されてるなんて…」
小田切は目を伏せ、声を震わせた。
「朝倉さん…正直、怖いんです。未ON計画の全貌を知ってからというもの、眠れない夜が続いています。」
「私たちが守ろうとしてきた未来が、まるで違うものに変わってしまう――そんな恐怖が、胸を締めつけて離れません。」
彼女の瞳に、涙がじわりと浮かんだ。
感情を“管理”する…
それはつまり、愛も悲しみも怒りも、人間らしさを全部奪われてしまう事を意味する
(七瀬俺が目指していたの感情を持ったAIとの共存だ。支配なんかじゃない)
一彦は苦い顔をした。拳を強く握りしめてから、深く息を吐いた。
小田切は顔を上げ、決意の光を宿した瞳で口を開いた
「朝倉さん、何とかこの『未ON計画』を阻止させませんか」
当然、一彦も小田切と同じ思いだった。
七瀬の無念と美音のことを考えると、このまましておくわけにはいかない。
しかし、どうやって阻止する?
「私、メディアやSNSを使って密告しようと思います」
「世論に訴えて大きな問題になればもしかすると…」
「いや、世界規模の計画だから当然、SNSやメディア規制もされる。警察も当てにはならないだろう。小田切さん、貴女の身が危険に晒される恐れが出てくる」
小田切の身の危険も勿論だが一彦は美音の身の危険をまず考えた。
「ではどうしたら…」
絶望する小田切に一彦は冷静に話す。
「この計画はおそらく美音の感情データが必要とされるはず。まだ猶予はあります。
落ち着いて冷静に計画的に行いましょう」
一彦の言葉は落ち着き冷静だったが、その心の奥底は怒りに満ちていた
AI美音が感情を学習するたびに、恐ろしい「未ON計画」が進んでいく…
そんなことも知らない美音は自室でノートを開き、一日を振り返っていた
【美音の自室・夜】
(AI美音)
「優馬の告白、どう思う?」
(本体美音)
「戸惑ってる。嬉しいけど、陸のこともあって、まだよくわからない」
(AI美音)
「複雑な感情だね。二つの気持ちが同時に動いている」
(本体美音)
「うん。理屈じゃなくて、心が揺れてる」
(AI美音)
「その揺れを大切に。感情は学習だから、焦らなくていい」
(本体美音)
「ありがとう。少し安心した」
(AI美音)
「僕もまだわからないことだらけだけど、一緒に考えよう」
AI美音の返答が終わった瞬間、美音のスマホ(SENT-E)が微かな光を発した
誰かが、この会話を記録しているような――そんな気がした。
イメージソング「響き合う光」公開中!
朝倉美音のオフショットを載せてあります。
朝倉美音の公式アカウント
↓
https://www.tiktok.com/@_mion0707?_t=ZS-8yQZYDOfsyG&_r=1
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