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第五章 第七話「英雄の帰還と、第二の鍵」

崩壊する「忘れられた洞窟」から命からがら脱出し、わたし達がアジトへ帰還すると、レジスタンスの仲間たちが心配そうな顔で駆け寄ってきた。

わたしは、手のひらの上で静かな青い光を放つ、玉になった「プロテクトアーティファクト」を、リーダーのエルダーへと差し出した。

「これは……アーティファクトを、破壊ではなく、封印したのかね?」

エルダーの鋭い目が、わたしの真意を問うように見つめる。

「はい。誰も犠牲にしたくなかったから。ネオンを助ければ、きっと、このアーティファクトも元の姿に戻せるはずです」

わたしの答えに、エルダーは深く、長い息を吐き、そして、その顔に深い尊敬の念を浮かべた。

「……お前さんたちは、我々が忘れかけていた『心』を、まだ持っているようだね。この地下世界の未来を、本当にお前さんたちに託して、正解だったようだ」

その頃、地下世界の最上層部。

監視官ピルは、巨大なスクリーンに映し出された、くろすけ達の戦闘記録を、興味深そうに眺めていた。

『ピル! なぜオラクルが倒されるのを黙って見ていた! 直ちに侵入者を処分せよ!』

ホログラムの向こうで、上層部の老人たちが激昂している。

しかし、ピルは冷静に答えた。

「いえ、お待ちください。彼らには、我々ですら手が出せずにいた、あの『ビブラー・エージェント』が守る中央シェルターへ、道案内をしていただく、という大役が残っています」

ピルは、口元に不気味な笑みを浮かべた。

「彼らの持つ『ウィーローの投げ縄』。あの神器の力があれば、あるいは……」

アジトでは、エルダーが次の作戦について語り始めていた。

「サンクチュアリの扉を開ける、二つ目のキー。それは、上層部の支配の根幹そのものとも言える、超高性能デバイス『キードライブ』じゃ」

エルダーが広げた設計図が示す場所は、地下世界で最も警備が厳重な、鉄壁の要塞「中央シェルター」。

「そして、そのシェルターを守っているのが……かつて、我々民衆の希望だった、伝説の英雄……」

ジンが、悔しそうにその名を口にした。

「ビブラー・エージェント……通称、『パル様』だ」

パル様。彼は、かつて誰よりも民衆を愛し、上層部に反抗した、地下世界最強の戦士だった。しかし、上層部との戦いに敗れ、捕らえられ、心を消去する洗脳を施された。今では、上層部の最も忠実で、最も強力な番犬として、キードライブを守っているのだという。

「彼に挑むことは、死を意味する。今の彼には、心がない……」

最強の敵。そして、洗脳されてしまった、元英雄。

その話を聞いて、わたしの心に、怒りよりも先に、深い悲しみがこみ上げてきた。そして、それは、新たな闘志へと変わった。

「わたし、行きます」

わたしは、顔を上げた。

「キードライブを手に入れるためだけじゃない。その、パル様って人の心を、必ず取り戻してみせます!」

わたしの決意に、ナイも「元英雄とのタイマンか。面白くなってきやがった」と、不敵に笑う。

次の目的地は、鉄壁の要塞「中央シェルター」。

待ち受けるのは、地下世界最強にして、誰よりも悲しい運命を背負った敵。

わたし達は、新たな決意を胸に、次なる絶望的な戦いへと、その身を投じる覚悟を決めた。

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