93.次世代へ
俺が生まれて350年。セルゲイを、ルドルを、ティーセを、モックを見送った。
そして今日、ついには妖精族のプープルさんまで見送った。これで竜族をのぞけば、俺が子供の頃に出会った人すべてとお別れをしたことになる。
セルゲイを見送った時の、悲しみに沈んだプープルさんを思い出す。
同族で暮らすのが当たり前の妖精族が、人族のセルゲイの為に一人暮らしをしていた強い人。さんざん悩んだ末にセルゲイの死後10年ほどだって仲間の所へ帰っていったっけ。
寂しさはじわじわと忍び寄ってくる。
俺は側近やロイドと共に、話し合いをして、この世界の運営に必要なものを、必要な場所に吟味して届けている。ちょっとした補助金とかじゃなくて、雨だったり、日差しだったりするところがブラックドラゴンの規模なんだけどね。それで上手く回っている。
神様が、この間やってきて、
「あんまり過保護にやり過ぎたらあかんで~。この世界が次代のブラックドラゴンの危機で全滅するで~」と注意された。
まあ、暴れないからそう見えるかもしれないけど、いろいろやらかしている事も多い。
ルドルが亡くなった時は3日間世界を凍らせてしまったし、モックの時は、大洪水をおこして大陸全土を水びだしにしてしまった。
子供の頃に出会った人は、なぜか特別なんだ。自分の心を形作る一つの要素となった出会いだからだろうか。
これから先は竜族の年長者も見送るのかと思うと憂鬱だ。
そして、いつしか、大きな災害が起こると、人々は、
「黒龍王陛下の親しい人がお亡くなりだ。悲しみが癒えますように」とお祈りしてくれるようになった。
そして時は過ぎ、俺の死後。この世界は、次の黒龍王の卵が孵るのを戦々恐々と待っている。
サリアやティルマイルが生前にまとめてくれていた、俺の前の黒龍王の対処法を参考に、防衛を強化したし、乗り越えられると信じたい。
「あれ~。またここで見とる。早う自分の世界創れって上司に言われてるやろ~」と神様に呆れられる。
「でもさあ、心配で。俺が、『話せばわかる黒龍王』なんてやったせいで皆が苦労したら忍びなくて」
「大丈夫やって、なんとかなるって。俺が創った世界やで。頑丈第一。繊細さや、風情がないって、この間も上司に嫌味言われたばっかりやで。ほんま嫌になるわ~。でな、聞いて~~」
いつもながら、愚痴を言い出したら止まらない神様だ。
「俺の創る世界か。別れはつらいし、もういっそ、バイオレンスな世界にして、そういうのは慣れっこです的なやつにしてみるか」と呟く俺に、
「なんや、病んでるなぁ」
「理想の世界を創っても上手く回らないって、初心者本に書いてあったしなぁ」
「まあ、そうやけど。最初からあんまり振り切った世界創るより、平均的なもの創って様子見したほうがええんちゃう?」
この2千年間、俺にぶっとんだ世界を提供してくれた、その神様にたしなめられるとは、これいかに。
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ドラゴンとは、これいかに。
これにて完結です。
お付き合いくださった皆様に感謝です。
なんだかんだ言いながら、ヨーイチはこれから自分の世界を、真剣に創っていくことでしょう。
それでは、また!




