78.実験
ドキドキワクワクの実験。万一の時に、俺の回復魔法が人目を気にせず使えるように、家のリビングでモックが実験体だ。
「なんで俺なんだよ。俺、研究所の関係者じゃねーし!」とぶうぶう言っていたモックだが、
「でも、黒龍王の魔力を使って魔法を放つ、史上初の人族になれるよ」と、歴史を調べもせず適当なことを言ったら、まんざらでもなさそうな顔をして、飴をなめてくれた。
「うえ、なんか、下がピリピリするな。う、おなかもピリピリしてきた!」とパニックになりかけていたので、回復しようかと手をかざそうとした、その時に、
【パッ】と一瞬弱い光がモックをつつんだ。
「成功ですかね?」ルドルは心配そうに、モックの背中をさすっている。
「う~ん、どうだろ?水よ、でろ!」とモックは用意してあったバケツに向かって事前練習と同じ動きをする。
【ジャー】「出た!俺、水の魔法が使えた!!」と大感激のモック。
「そのまま、出し続けて!計量しますよ」と興奮しながらも冷静なルドル。
俺は、出てくる水の量が検討もつかないので、大量のバケツを魔法で作ってリビングに並べている。どれだけ出るんだろう?
「ほんのちょっと、めちゃくちゃちょっとの魔力しか飴に込めていないけど、結構出るね」
「我が君の魔力ですから、特別なのでしょう。イレギュラーが過ぎるのでは?」
「少量でもこのようなことになっているのですもの。次はプープルさんにお願いしてみてはいかがかしら。実用性を考えると、我が君の魔力は計測しても無意味かもしれません」と、散々な言われようだ。
ルドルもあまりの量に苦笑いだ。モックは、
「もう勘弁して~。疲れた。魔法使うのって疲れるんだ。魔力より、俺の体力がもう限界だ!」と弱音を吐いている。
「魔法には体力なんか使わないよ!気のせいだよ」と俺はアドバイスをしたが、
「いえ、通常は体力も消耗します」カマラテによって、すかさず訂正されてしまった。
「ほらな。お前の言うことはもう信じないぞ!やめさせて~。ムリ~」と言って、モックは床に大の字に寝転がってしまった。
バケツの数は100個くらい。10リットルサイズのバケツ100個だから1トンか。床が抜けなくてよかった。
翌日モックの体力回復をまって、プープルさんの魔力のはいった飴をなめてもらって再実験をしようとしたが、まだ体に俺の魔力が残っているようで、研究所の人で実験をやり直すことにした。
回復魔法も必要なさそうだし、研究所でデータを取るほうがいいだろう。
結果は、魔力にも質があるようだということが、分かった。
竜族以外のものが全力で飴に魔力を注いでも、人族はそれでバケツ30個分の水が出せる程度だが、竜族が少量でも注ぐと80個分になる。俺のは、イレギュラーが過ぎて、実験データとして公式には残されなかった。なんだか残念。
魔力の保持に関しても、モックは一週間くらい魔法が使えて大喜びしていたが、竜族以外の飴は一つで一日程度、竜族の飴は3日程度という結果がでた。ちなみに竜族が少量よりも気持ち多めに魔力を込めると、なめるとピリピリするようだ。限界点がわかりやすくていい。
データをまとめて所長のメリノさんに報告書を提出した翌日、
【バッターン】と物凄い音を立てて、扉が開いて、メリノさんがルドルの研究室に飛び込んできた。




