7.不思議生物
「側近5人にする?」と提案すると。
「それは絶対に無理なんです!」とビリーヤが大慌てでブンブンと手を振った。
絶対に無理?なんでだ?
首をコトンと傾げる俺に、意外にも「う、かわいい」と言いながらティルマイルが手を伸ばしてくる。ここの人達はみんな可愛いもの好きか、黒龍王好きか、いずれにしても、俺が大好きのようだ。
ま、だからこそややこしいとも言える。
どうやら、側近4人体制は、この世界の勉強をすれば納得がいくものらしい。簡単に教えてもらうと、
この世界は、4分割にされた領土があり、その土地を治める竜の種族が4種族。なので側近は、それぞれの領地から仲良く一人ずつ選ばれるという訳だ。徹底しているのはこの城郭内に住む者は厳しい人数制限があり、それも4種族平等に割り当てられているんだって。
「なるほどね。それなら、ロイドを側近にしたらどこかの領地から二人側近が出てしまうことになるんだね?」
「その通りでございます。ロイドはカマラテと同じ地竜領の者ですわね」
「サリア、種族を見分けることは出来るの?」
「大変簡単でございますよ。髪色に、はっきりと系統がございますの。
私のようなアイスドラゴンは白、青の系統。
ティルマイルのファイアドラゴンは紫、赤。
ビリーヤのサンダードラゴンは黄、オレンジ。
カマラテやロイドのアースドラゴンは、緑、茶なのです。分かり易うございましょう?」
「そうだね!不思議だねぇ。でも簡単だし、楽しいね!俺は人型になったら黒髪か、前世と同じってつまんなくない?派手な色でも良かったのになぁ。オレンジとか?」と、言った瞬間。
【ビカッ】と衝撃のような光が放たれた、気がした。そしてティルマイルの腕の中で顔を上げると、うん?顔が動かしにくいぞ?
「ふへぇ~」あれ?しゃべれない。
「こ、これは!どうすれば??サリア、ロイド様?」とティルマイルは体をこわばらせながらも俺を落とさないようにしてくれている。
「な、な、な、なんとすればよいものか。長く生きてきたが、人型の赤子など見たことがない。取り敢えず、ゆっくりベッドにお戻ししろ」
「あり得ないくらい、ふにゃふにゃですよ。赤子とは骨がないのでしょうか?一人で寝かせても大丈夫でしょうか?」ワタワタするティルマイル。
「そんなに柔らかいの!?人族に知り合いのいる者を探してきます!」と走り出すカマラテ。
「お待ちなさい!」とサリア姉さんが一喝。頼もしい。
「非常事態ですが落ち着きなさい。我が君はブラックドラゴンですよ。ふにゃふにゃだろうが人型の赤子だろうが、傷などつかないはずです。まずは危なっかしいので、ゆっくりとベッドに下ろしましょう」
どうやら俺は光って、赤ちゃんに変身したようだ。
パニックで固まっていたティルマイルに抱かれているより、ベッドの居心地は数倍いい。だが、座ることはおろか、寝返りもうてない。赤ちゃん、不便すぎる。あ、このままだと、オムツされちゃうかも。
嫌だ~~~!!!と思ったら、またもや【ビカッ】となって、今度は少し大きくなったようだ。何歳くらい?2歳とかくらいかな。
「ビックリちた」あ、しゃべれた。横を向くと鏡に映った自分が見える。可愛いクルクルのオレンジ色の髪の乳幼児だ。素っ裸だが、赤ちゃんだから許してもらおう。女性陣は見ないでくれると有難い。
「おれ、オレンジいいっていったから、オレンジ?」とサリアに聞く。発音は舌の回りが悪いせいか、たどたどしい。
「どうでしょう?では、赤色になりたいと思ってくださいませ」
「うん」そして、【ビカッ】
「赤髪にもなれるんですね!」とファイアドラゴンの証である赤色になった俺にうれしそうな顔を見せるティルマイル。
「それにしても、我が君は不思議生物ですわね。聞いたことのない現象のオンパレードですわ」と目を丸くするサリア。
不思議の世界で、ドラゴンに、不思議生物認定されるとは、これいかに。