59.ミッション
少々どころではなく、ゲンナリしたモックと楽しく枕投げをして、ワキャワキャと楽しんだ俺は大満足だ。
20歳くらいに見えるとはいえ、ビリーヤもカマラテも300歳くらいらしくって、なかなか俺のフレッシュなノリに付き合ってくれないので、こんな些細なことでも超楽しい!
ティルマイルにそんな風に伝えたら、
「我が君、それは……我らが主君に枕とはいえ投げつけることが出来ようはずがございません」
「モック青年は人族で、我が君のお力の凄さがよく分かっていらっしゃらないからこそ、あのような恐ろしい所業が出来るのでしょう」と、カマラテを震え上がらせてもいた。
仲良くしてもらってても、枕投げはNGなんだなぁ。
さて、翌日ルドルと研究所へ行ってこれからの打ち合わせだ。俺は助手だから一緒に行くよ。いや、助手は言い過ぎだな、助手の卵の卵の卵くらい。てへっ。
セルゲイとモックは人族の知り合いに挨拶に行くというし、プープルさんも花の妖精のベースに顔を出すという。住む場所は違っても、それぞれの同族の繋がりは濃いようだ。
前世の世界のように、一般人が頻繁に遠出をすることはないけれど、それでも僅かな繋がりを切るまいと大切にしている姿はとても良いものだ。
竜族も一役買っている。毎日のように町と主都、主都と王都を行き来して情報を伝達している部署があるんだけど、その人たちが他の種族の集めた郵便物をついでに運んでくれているんだ。竜族、我が種族ながら、いいね!心が広いよ。
側近達には、手作りの夕飯を用意して待っているようにという、非情なミッションを与えておいた。
阿鼻叫喚する面々だが、置いてけぼりがダメージなのか、夕飯を作るという行為に恐れおののいているのかどちらだろう?いずれにせよ、俺は振り向きもせずに元気に出掛けた。初出勤だぞ~!
**サリア視点**
我が君は、我らを振り向きもせず去ってしまわれました。どうしたものかしばし呆然といたしましたが、まずは夕飯を作れという命令を実行せねばならないでしょう。
「お夕飯を作ったことがある方いらして?」
「「「……」」」
「あ、でもこの間、初等園のオリエンテーション合宿で肉と野菜を焼いている、何と言ってたっけ?バーなんとか?なら出来る気がします」
「あ、あれね。バーベキューね。あれなら確かに出来るわ。材料を買いに行きましょう!」
町の市場で色々と新鮮そうなものを仕入れながら、それぞれの店で切り方や火の通し方の説明を受ける。これなら上手くやれそうだわ。
でも、店先に数カ所、人にバッテンの印がついた商品が目に入ってくる。
「あ~、これね。人族は買っちゃダメだよ、毒があるよってマークだよ。うちにはたまに人族も買い物にくるからねぇ」と教えてくれる。
「人族にも夕飯を振る舞う予定ですのに!」と今まで買った店に確認に走ると、なんと半数も人族には危険な食べ物だった。
呆然とする私達に、店の人は、
「いやねぇ。完全に食べらないって訳じゃないものもあるのよぉ。ただ下処理しなきゃダメってこと。あんたたち、どう見ても下処理とか出来ないでしょう?人族はすぐに死んじゃうから、滅多なもの出しちゃだめよぉ」と追い打ちをかけてきた。
宿の夕飯とかがシンプル重視の単純な味付けだったのは命の危険を回避するためだったのですわ!なんてこと、万が一にもルドルさんを死なせてしまったら、我が君の怒りに触れて我らも命が無いでしょう。なんという恐ろしい試練でしょうか!?
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