43.別荘
その後は怒涛の流れと言っていいだろう。目がバキバキで鼻息シューシューの領主たちが日参して別荘の進捗具合を報告してくる。
「みんな、きあいが、ちゅごいね」とつぶやく。
「それはそうですわ。自分の領地に我が君の別荘が建つのですもの。張り切るのは仕方ございませんわ。我が北の領は場所の選定をする必要がございませんでしたでしょう?ですから、サクッと建物のコンセプトなどを詰めだしましてね。それを見た他の領主達は大いに焦っているのだとか」
「それは仕方ございません。南は、アースドラゴンならではの古き良き時代の建築をご覧に入れたいと、場所選びが難航しておりまして、特に焦っております。ロイド様が、時間をかけてもいいから最適な場所を!とプレッシャーをかけていらっしゃいましたから、我が領はもうしばらく揉めそうです」
まあ、この辺までは予想していたよ。でも、西のビリーヤの所は、なぜか宴会場の規模や、領民に向けてのお手振り用のバルコニーの角度なんかで揉めていた。なんか、遠い目をするしかない。出来上がりが怖い。
ティルマイルの所は、知的なファイアドラゴンの集団なので安心していたら、そうでもなかった。
何故か、講演会の会場を併設させようとか、『黒龍王陛下の歩み』なんてコーナーを設けようとか言っているようで、学術集会の会場のような事になりそうな予感がする。秀才揃いのファイアドラゴンに言うのも野暮かとは思うが、別荘の意味を知っているか!?
一週間後、北の領の別荘が出来上がった。大規模魔法で一気に作るのでコンセプトが決まった後は、あっと言う間だ。
早速出発。白と青のモチーフが美しい、優美な別荘が出来上がっていた。
「陛下の建物を自分達だけの色で作れる幸せを満喫致しました」と領主は晴れ晴れとした顔をしている。
だろうね。思い切り主張しているよ。寝ぼけていてもどこの別荘かすぐ分かる。
少しくつろいだら、後は主目的だ。お隣さんにご挨拶!
隣のテイル村は突然出来上がった建造物に度肝を抜かれているだろう。事情を知っているのはルドルとセルゲイと村長のティーセだけだもんね。
最初はド派手に物々しく挨拶に行った。次回からは秘密の地下道で、ルドルの家と往復できるよ。サリアのアイデアらしい。グッジョブ!
サリアは頬を染めて、
「お褒めにあずかり光栄ですわ」と言って照れていた。可愛いなぁ。700歳超えとは思えん可憐さだ。
いつの間にかルドルと仲良くなって許可をもらったらしい。
「黒龍王様、ようこそテイル村へ。我ら一同、近隣の者として、お役に立てれば幸いでございます。なんなりとお申し付けください」と頭を下げたのは、テイル村の村長ではなく、ここら一帯の管理をしているアイスドラゴンだった。地方の大名的なポジションかな。
「ありがちょ。とってもいいね。ちょくちょく、くるよ。なにかあったらヨロチクね!」
「かしこまりました。サリアに申し付けて頂いたら我が領は骨身を惜しみません!」と領主。
黒龍城より快適に過ごせそうな気がする。我ながら良い我がままを言ったようだ。




