38.黒角と領主
俺の熱烈プレゼンのおかげで、楽しい宝探しオリエンテーション合宿は実現することとなった。教頭でもある担任のヤノス先生がノリノリだったおかげが大きいけどね。場所はドーンと気前よく黒の森を貸し出すと言ったので、教師が全員引率に立候補する事態になっているとか。その辺は、勝手に決めて欲しい。
初日に挨拶できずに怒られてしまったらしい東の領主の息子アルムスは、慣れてくるととてもいい奴だった。楽しい事が大好きで、ちょっと慎重さに欠ける。クラスに一人いると大変重宝される愛すべきキャラクターだ。
だが、学問の街とも言われる西の街の跡取り息子としては少々思慮深さに欠けると、世話係が口やかましい。そんなだから、初日にビビっちゃったんだよ。
真っ赤な格好いいドラゴンがしょげかえる姿なんて見てられないよ。
「ねぇ、アルムス。領主の子どもってみんな黒角なの?」と、もしかしたら常識なのかもしれない事を聞いた。
ちょっと驚いた顔をされた。やっぱり常識だったか。でも俺0歳だから許してね。
「あ、それはですね、領主一族は、黒角が他のドラゴンよりは多く出やすいと言われています。ですが、それだけで、確実に黒角で生まれるという訳ではありません。もし、僕が普通の角だったなら、父はもう一人子どもを作るか、一族の中で側近にならなかった黒角から次期領主を選んだでしょう」
なるほど、血よりも黒角優先って感じか。
「じゃあ、もしアルムスが次の側近に選ばれたら、次期領主は誰になるか決まっているの?」
次の側近というキーワードで、現側近のティルマイルが引きつり笑いをしながら、
「まだ、引退は考えておりません」と割って入った。
「はいはい、分かっているよ。たとえ話しだからね」
「父はまだそこら辺は考えていないんじゃないかと思います。僕が高等園に入る頃には動きがあるかと思いますけど」と暢気に答えていた。きっとあの神経質っぽい父親だから何手も先を考えていると思うけどな。
それにしても領主より側近の方が優先される職業っていうのが不思議だ。
マックにも聞いてみた。
「私も、側近になれなくても領主にはなれるっていう恵まれた生まれですから……。世話係に言わせると、気合がたりないらしくって。周りも側近は無理だから領主だろうって思っている気がします」
なんと、この子本当に4歳なの!?達観しすぎ。そして若干拗らせている。どこもみんな黒角の教育を間違っている気がしてならない。なに?その、領主ですら、側近になれなかった出来損ない扱いって。
う~ん。でも、親の領主もみんなそう言われながら領主をやっているのなか。根が深い。
俺の側にいる4人の側近を見ると、俺と目が合って嬉しそうにしている。これが、この国のトップエリートか。信じられないなぁ。
特にビリーヤが、だけど。可愛いワンコ体質のビリーヤの実力をいつか見る時がくるんだろうか。
見てみたい気もするが、その時は俺が暴走した時だと予想が付くだけに複雑だ。
側近バトルロイヤルでもやるか?仲が悪くなりそうかな?止めておこう。




