33.ありのまま
「「「このままで!?」」」側近たちの声が揃った。
そりゃあそうだろ?よく考えたら、俺ってやりたい放題やっていい黒龍王なんだろ?ほうぼうにワザと災害をまき散らすでもない、良心的な黒龍王になろうと頑張っている俺が、なんで学校まで我慢せにゃならんのさ。しかも、16歳には戻れそうにないから、小さいヨチヨチの初等園で我慢するって言ってるんだよ。
「しょう、このまま。くろで、おおきさもごまかしゃない!」
俺の頭のなかでは、某有名なアニメ曲がリフレインしていた、「ありの~ままの~すがた~みせるの~」ってヤツ。
俺の場合、少~しも寒くないわ、じゃなくて、怖くないわ、かな?まあ、学校関係者と生徒はビビり散らすのかもしれないけど。
取り敢えず、行ってみて、どうしても迷惑になるんなら止めよう。それくらいの空気は読むよ。元日本人だからね。
「まあまあ、側近の皆さま、今代の黒龍王様は私共の村で、人族として3カ月も問題なく生活できる程の順応力がある御方です。一度試してみてもよろしいのではないでしょうか?」とルドルが援護してくれる。
「ありがと!りゅどりゅしぇんしぇい!」
側近たちと目が合う。言いたいことは分かっているよ。それとこれとは話が違うと言いたいのだろう。人族に順応できたのは、元人間だからだもんね。
でもそれは内緒だから言えないんだよな。ふふっ。
「じゃ、きまりだね。あちたから、いこう!」と、言いよどんだ側近たちを、賛同者のように扱って話を終わらせた。
「じゃ、しぇんしぇい、またあしょびにくりゅね」と、またの再会を勝手に約束して俺は空高く飛んだ。
何故かって、格好よく去りたかったけど、帰りの方角が分からなかったからだ。ちょっと恥ずかしい。という訳で、高く飛ぶ。おおよその方角が分かれば直線で飛べばいいだけだ。察してくれたのか、
「我が君、こちらでございます」とビリーヤが先導してくれた。
怒っているかと思ったけど、側近たちは優しいものだ。もはや諦めの境地なのかもしれないけれど。それか、また居なくなられたらたまったもんじゃないと思ったのか……。
黒龍城に戻るとロイドは泣いて喜んでくれたが、勿論お説教も忘れていなかった。お説教と言っても、我慢を溜めこんで爆発、蒸発する前に、小出しにして欲しいという懇願に近い物だった。相当心労をかけたようだ。反省。
でも、これが一因で俺は、赤ちゃん黒龍姿のまま、4歳児に交じって初等園に通う許可がもらえた。勿論、変装も変身もしないので側近4人も側に置いておけるよ。お世話係の一枠を争って、喧嘩にならずに済んだね。
ちびっちゃい赤ちゃん竜の俺。4歳児クラスのアイドルになれるように頑張ります!
と、鼻息あらく思っていたんだけど、ちょうど今は3月で春休みなので、4月から新入生に交じって入学することになった。
初めから、周りが、あれはダメこれはダメって言わずに、すんなり事が運んでいたら三カ月前に転入できたんだけど、それは言わないことにしよう。
ちなみに、転入制度は、極々まれに、生まれてすぐじゃなく成長過程で黒角になるドラゴンがいるので出来た制度らしい。
転入も入学も試験はない。ただ一つ黒角であることだけが基準の王都の初等園だからだ。
俺だって、立派な黒角だからね。基準はクリアだ。見た目年齢は足りてないけど、中身が16歳だから、プラマイゼロどころか、プラスで、楽勝モードの学校生活だぜぃ。いえい!




