32.決断の時
目が覚めると、ルドルと村長のティーセが、側近4人とお茶を飲んでいた。村長はどうみても顔色が普通じゃない。俺の事を聞いたのかな?
自分で話したかったけど、恥ずかしながら、泣きながら寝てしまうという失態をおかした後だけにクレームもつけられない。
「ごめんにゃたい。ねちゃってた」
「我が君、説明は我々が致しました。勝手を致しました」とカマラテが謝ってくれる。
「いいよ。ありがと」外を見ると、雨も上がっていてホッとする。
「それでは、そろそろ、我が君、黒龍城へお戻り願えますか?」ティルマイルは少し不安そうに聞いてくる。
黒龍城か、俺が、嫌だ~ってなって訳も分からないまま人族として草原に転送?された時となんら状況は変わっていないんだよなぁ。帰っても同じことの繰り返しならここに居ても良くないか?
「ここにいちゃダメ?」と瞳をウルウルさせながら聞いてみる。あざといと言われても構わない。必殺技は使ってなんぼだ。
「ヒッ!」と村長が死にそうな声を漏らしたが、聞かなかったことにしよう。人族のようにひっそり暮らしている人達に、いきなり黒龍王を迎えろなんて負担だよなぁ。
ルドルにも、
「りゅどりゅしぇんしぇいと、はなれちゃくないよ!」としがみつく。これでどうだ!頼む、頷いてくれ!
しばらく沈黙……。誰も言葉を発さなかった。人族からすると、超重荷。竜族からすると、三行半。そりゃあこうなるか。
漸く話し出したのは意外にも村長だった。やはり、この村の責任者として、なんとかせねばと思ったのか。
「あのですね。黒龍王様、ここで暮らしたいとのことですが、ソウ君の姿になっていただけるなら問題はないのかと、思うのですが。いままでここで、何の問題もなく、ルドル先生の事務仕事のお手伝いとして働いて居た訳ですし」
「我が君を働かせていたですって!?」サリアが声を尖らせる。やめて。ほんと。そこは、スルーして欲しかった。
「はたらきたかったにょ!」と即座に割って入ったが、村長は更に顔色を悪くしてしまった。死にそうな色じゃなくて、もはや死体色。
「もう、ひとじょくなるの、むりだったにょ」と俯く俺。
そして、ルドル先生は周りを見回して、話し出した。
「先程側近の方から伺った経緯をまとめると、ソウ君は、いえ黒龍王様は、初等園に身分を隠して通いたいが、同行する一人だけの世話係を決めかねて揉めていたという訳ですよね?」
まあ、俺が何のドラゴンに変身するかでも揉めているんだけど、それは秘密だからね。人族になっていたことも大概トップシークレットだとは思うけど。
「そうらよ」
「それでは、角に色を塗って、黒角をカモフラージュしてから、地方の初等園に通ってはいかがですか?定期的に転校して様々な初等園にいって、その時の領地の種族の側近様を世話係になさっては?」
うん。なかなか楽しそうな案だ。
「しかし、地方の初等園では世話係は付けないと聞いたことがあります」
「だったりゃ、せわがかり、いらにゃいよ!」と言ったら、絶望的な顔をされた。
「世話係は必要ですわ!それに、角に色を塗るなんて!」サリアは大慌てで声も大きくなっている。
「角に色ですか、我らはなんでも魔法でしようとしますので、魔法で出来ないことは無理な事と分類してしまいますが、まさか、色を塗るとは、人族は面白いですね」とティルマイルは感心している。が、でもやはり、世話係は必要だと主張する。
「わかったにょ。じゃあ、もう、このみゃみゃで、おうとにかよう!」




