24.いつもの問題
今日は朝から黒の森にやって来た。変身の練習の為だ。
皆が4歳相当の大きさのドラゴンに変身することが出来たら初等園にすぐにでも通っていいと言ってくれたからだ。頑張るぞ!
『ちょっとだけ大きくな~れ』と念じても、一向に大きくなれない。認識阻害で大きく見せることは出来るけど、学校で他の生徒達と一緒に学生生活を送ることを考えると、実際に触ると小さいままという訳にはいかない。
「人型の赤子から、少し大きくなった時にはどのように念じたのですか?それを参考にすれば、よいかもしれません」とカマラテが言うので、思い返す。
なんだったかな?あの時は、赤ちゃんは寝返りもうてないし、しゃべれないし、このままだと、オムツをされちゃうかも、嫌だ~~!って思ったはず。キーワードは『嫌だ』かな?
『小さいからって初等園いけないの嫌だ~!』
【ビカッ】光った!どうだ?
「どれくらい大きくなった?学校行けそう?」
「あ、あの、そうですね。2歳くらいには、いえ、頑張れば3歳くらいに見えなくもないですか……」とティルマイルが言葉を濁す。
どうやらちょっと小さいようだ。もう一息。
『学校行けない大きさは嫌だ~!』
【ビカッ】どや~!
「若干、大きくなってございますよ。これなら少々小さい個体ということで通るのではないかと」
「やった~~~~!」と大喜びしたら、【ボフンッ】と元に戻ってしまった。ドラゴンの体は大きいままで定着しないようだ。常に魔法を発動しておく感覚を覚えよう。
そうして、練習を重ねて、数日。
皆からお墨付きをもらって初等園に通ってもいいと言ってもらえた。
だが、またしても、問題だ。そう、問題と言えば、いつものやつ。
何色のドラゴンになるかの問題だ。学校へ行きだすと毎日違う色のドラゴンで、とか、一人帯同させてもいいらしいお世話係を種族を超えてとっかえひっかえ連れて行くとかいう訳にはいかない。
色を固定して、連れて行く側近を一人に絞る。これは中々ハードルが高い。案の定、誰も譲らないし、じゃんけんで決めるのも大反対された。ティルマイルがじゃんけんに強すぎて結果が見えているのもあるかな。
これじゃあ学校は行けない。絶望的だな。あ、でも絶望してはいけない。また災害級の大雨を降らせてしまう。
俺は、思うがままに破壊してもいいという黒龍王の役目を重荷に感じた。前世の記憶がそれを良しとしないからだ。
『俺は、俺らしくありたい!』そう切実に思ったその時、
【ビカッーーー!】と光に包まれた。自分で出した光に自分自身目が眩む。
しばらくして目を開けると、そこは、見たこともない場所だった。
何事?ここどこ?草原?俺どうなってる?手を見ると人の手だ。しかも幼児の手じゃない。前世の俺くらいか?
あ、フラフラする。
バタンと倒れる自分を自覚する。
唐突なバッドエンドとは、これいかに。




