21.認識阻害
因みに、説明すると、俺の人型の顔は写真で見た前世の2歳の頃の俺、そのままだ。めちゃくちゃ可愛いと近所で評判だったと、写真を見る度に母が言っていた。
その後に、小学生になる頃には普通になっちゃったのよねぇ、とも言っていた。俺の見頃はあと、数年だ。悲しい。
この顔を、変えようとしてみよう。
まず、鼻を高くするか?子どもの鼻があんまり高いと、違和感しかないけど、まあ、実験だし。
『鼻高くなれ』と念じる。鏡を見ると2センチほど高くなった。
「やら。こわい!」すぐに元に戻す。
皆を見る。
「ね。こんなかんじでやっちぇみて!」
「こんな感じって。念じるだけで顔が変えられるなんて、我が君だけの気がします」とビリーヤは諦めている。
「あきらめたら、そこでしあいはちゅうりょうなんらよ!」とスポコンスピリットを説く俺。
そして皆で色々試したが、結局は失敗に終わった。だめか。
「じゃあ、おれぇ、やってあげゆね!」といって、4人一遍に魔法をかけようとすると、ティルマイルが、
「お待ちください我が君!先程、鼻を高くしたら違和感がございましたよね。我々も長く親しんできた顔が変わるのはいささか、とまどいがございます。顔を物理的に変えるのではなくて、認識阻害を試して、違う顔に見えるかやってみますので、それでご勘弁いただけないでしょうか?」と、早口で捲し立てた。
「にんしきしょがい?」それでいいなら、簡単そうだ。
そんなの出来るのなら、なんで最初から、それをやらないんだ?と、不思議そうな顔をすると。
「認識阻害は、力が同等もしくは上位の者には見破られますのよ。ですから、使う者はほとんどおりませんの。我々が使っても我が君には普通に見えるということですわ」
「そもそも、城の侵入路を一般人に誤魔化すなど、建築関係に特化した魔法ですので、顔に使うという発想がございませんでした。黒角だらけの城内では意味もないですしね」
「やってみて!じょうかまちだと、やくにたつはじゅ!」
「自分以外の人の顔に見えるようにするって言われても、漠然として難しいですね」カマラテは悩んでいる。
「そうですわね。誰かに似せるとかだとやりやすいかしら。私は亡くなったおばあ様にしますわ」とサリアは即決。
結果、無事、みんな認識阻害の魔法で変身じゃないけど、目くらましができた。ま、俺には、少し紗がかかったかな~?くらいに見えるだけだけど。
4人はお互いに、いつもの姿に見えるが、炎天下に日陰にいる人のように黒っぽく見えているらしい。
「城内の仲間に見られたら、僕たち怪しさマックスですよ」とビリーヤが嘆くので、城下に出てから魔法をかけることにした。
そして、今日の俺は、レッドドラゴン!赤ちゃんサイズだけど超格好いいんだ。
この色もまた、じゃんけんで決めたんだけど、ティルマイルが異常に強い。よってティルマイルのファイアドラゴン色だ。ビリーヤはガックリと項垂れている。
じゃんけん。訓練で強くなれるのか?がんばれビリーヤ。
**<閑話>ビリーヤ視点**
僕はじゃんけんが弱いようだ。我が君が教えてくださった平和的に勝負がつくものだが、いかんせん、練習すれば勝てるようになるとも思えない、非情な戦いだ。
それに、世界の基準は4分割なのに、なぜか3つのパターンで勝負をつけるんだ。このあたりのルールを変えれば、僕にも勝機がある、気がする。我が君にご相談させていただこう。
*****




