20.素敵な自室
結局すったもんだのあげくに、修復班を呼んできて、俺が全員に必死のプレゼン。
「この、とちょかんみたいに、しっくで、かっこいいのがいいにょ!」
なんとも締まらない滑舌だが、このブラックモダンな落ち着いた良さを伝えるべく、なんとか頑張った。
理解してくれれば、話は早い。結局のところ修復班というのは大工さんと同じで、センスの問われる職業だし、顧客のニーズに合わせられるプロフェッショナルでもあった。
全体はアイアンの黒と木目の美しいこげ茶色(アースドラゴンの南領)の木で纏めて、花瓶とか食器は白(アイスドラゴンの北領)だ。
俺の想像するインテリアに出てこない紫・赤(ファイアドラゴンの東領)、オレンジ・黄色(サンダードラゴンの西領)は悩んだがいいアイデアが浮かばず、結局、ロイドの、
「それでは、西、東の各領から定期的に花を納入させるということでいかがですか?花ならば明るい色や派手な色味であっても黒の邪魔にはならないでしょう」という意見を採用した。
確かに花ならね。見慣れた色味だ。
という訳で、修復班のおかげか、俺のプレゼンが良かったのか、あっという間に俺の私室が、超格好よく生まれ変わった。
一番大変だったのは、花瓶なんかを選ぶサリアだったかな。北棟に飛んで帰って何やらお偉いさん達と吟味をしたようだ。
「ありがちょう、みんな!すっごくすちぇきだよ!」
俺は、知識で転生を乗り切るタイプではないが、それでも、このブラックモダンインテリアや、まさかの『じゃんけん』を流行らせることになった。そうでなくても注目されている黒龍王なのに、ますます注目されることに……。
特別な知識が無くても転生者って世界に影響を与えられるもんなんだなぁ。
それにしても、目立ちすぎるな。東街を堪能したとは言い難い。人が近寄ってはこないものの、ワラワラ周りを囲むんだもん。
俺は、人型を諦めてドラゴンに変身して、色を変えれば、ただの黒角のチビドラゴンで通じるが、いかんせん、憧れの職業、『側近』4人を引き連れていてはどうにもならない。
ということで、
「きめた!きょうから、とっくん!みんな、へんちんのれんちゅうね!」
「変身の練習ですか?我ら、すでに人型に変身しておりますが?」いぶかしむティルマイル。
「ちあうよ。じぶんじゃないのに、へんちん!」
「我が君、恐れながら、私共は自分以外の色には決して変身できないのです」
「ぜっちゃいに?」
「絶対にできません。試した者も数多くおりました。異種族間の結婚を希望したものなどは、愛するものと同じ色になりたいという切実な願いを持ったものも多かったのです」とカマラテ。
「図書館の創設者も、妻の色の茶色を使っていたでしょう。恐らく、妻とは言っても結婚はしていないと思いますわ。異種族間では子が出来ませんので結婚という形をとらないのです」とサリア。
なんと!?異種族間では子どもが出来ないんだ!それは、子どもが欲しい異種族カップルは色(種族)が変えたくなるだろうな。
なんか悲しい話になってしまった。
「う~ん。むじゅかしいのか。じゃあ、かおをかえりゅ!」
「「「「顔を!?」」」」
一同、声を揃えた。ドラゴンから、似ても似つかない人型になってるんだから、そこは、どうとでもなるんじゃないの?




