2.最初からミス?
悩んでも仕方がないので、取り敢えず、大自然にたった一人となれば、サバイバルで大切な事は、食料確保か?
ドラゴンの戦闘本能はガッツリ凶悪で、40センチ程の体高のプリティーな俺でも、サクッと野ウサギが仕留められる。なんか、小さな爪から、かまいたちのような風の刃が見えた気がする。やっば!失敗したら自分のしっぽも切り落としそうだ。
少々訓練が必要だな。
さてさて、戦闘本能はいいが、今くらいの空腹状態では生存本能はまだ働かないようだ。この野ウサギの屍にこのまま噛り付くのにはね、高いハードルがあるのだよ・・・
本能情報によると、成長するにつれ人型になれるようなんだけど、今は無理のようだ。
まあ、でも、先輩ドラゴンは人型になっているなら、街の一つも形成しているだろう。街を探してファミレス的な場所を探すかな。現金がないのが痛いな、どうしたものか。神様!そういう豆知識も本能情報と共に、デフォルトでお願いしたかった。
野ウサギ(屍)の前で考え込んでいると、猛烈な速さで何かが飛んで来るのが見えた。
戦闘態勢とるか?火とかも吹けるのか俺?練習もせず攻撃するのは危険だなってさっき考えたばっかりだけど、背に腹は代えられないか。でも味方だったらどうする?
なんてことが一瞬で頭を駆けまわっている最中に既に、そいつは目の前にいた。黒い角の生えた超絶美形な金髪、というか黄色のフワフワの巻き毛のショートカットの男だ。しかも目の前に跪いている。
敵ではないな。良かった。
「我が君、お迎えにあがりました」とその男。
「???」
どうやら何か俺の知らない設定があるらしい。
我が君だって?
ププッっと吹き出しそうになって思わず口を手で覆うと、自分の手が爪のあるドラゴンの手でちょっと引く。慣れるまでは大変だ。人型早めに習得したいな。
「黒龍城にお連れします!失礼します!」と男が、元気いっぱいに言ったかと思うと、俺は抱き上げられた。
「えぇ!ちょっと待って、どこに連れて行くって!?」と慌てて、状況を確認しようと声を上げた。
「な、な、なんで!」と驚愕する男と至近距離で目が合う。
「??」俺はキョトンと首を傾げた?男の驚くツボが分からん。
「か、かわいい」と、男。声に出すつもりが無かったのか、吐息のように出てきた音声を俺は確かに拾った。
いや~、やっぱ俺、可愛さで世界征服できそうだな。
赤ちゃんの可愛さと言えば丸っこいお尻フリフリだろうか。抱かれている腕から飛んで抜け出す。そして、お尻とおまけでシッポもフリフリしてアピール。精一杯の笑顔もしてみたけど、笑顔の練習をしていないので、ドラゴンの顔でどれほどの笑顔が作れたのかは不明。
でも、男は固まっていた。可愛さ、刺さった?
フリーズした男を見て、俺は、お尻とシッポと笑顔、全部一度にやったから、この人にどこが刺さったのかリサーチ出来ないなと考えていた。こういうのは小出しにすべきだったか。
しばらくして漸く動き出した男は、
「あの、我が君。私ビリーヤは、我が君の誕生にいち早く気づき馳せ参じたつもりでおりましたが、もしかして、何年か前にお生まれでしたでしょうか?」と聞いてきた。
あ~、これは、生まれたての赤ちゃんドラゴンはしゃべったらダメだったのでは?
前世持ちの転生ドラゴンとか不気味カテゴリーに入っちゃう感じか?
情報が少なすぎて判断材料がなさすぎだ。もう可愛がって貰えないかも。