16.天然オールスターズ
ティルマイルの言葉に絶句する。
その様子を見て、サリアが、補足をと、説明を始める。
「我が君、ドラゴンは傷付きにくく、付いてもすぐに再生いたします。自分より下位のドラゴンからの攻撃は、ほとんど無傷で対応できます。
しかし、人型の場合は、上位下位関係なく、攻撃されれば傷付きます。再生スピードの速さで上位のドラゴンかどうかが決まりますのよ」
「?どゆこちょ?」
「ですから、我が君は、本来ドラゴンの姿でしたら、我々の攻撃は足止め程度にはなっても、傷は付けられないということです」とカマラテ。
「人型であれば、シールドなどを意識的に張られない限り、我々の攻撃も通るということですわ。そして、黒龍王は人型でも瞬時に再生するというのが通説ですの。試したことはございませんが」
「我が君のような見たこともない幼児人型ですと、もしかすると、再生までに数分かかるのかもしれません。その為に本日は時間を計らせていただこうかと」
ふむふむ、なるほど。すぐ生えてくるならいいよ。ってなんないから。
絶対嫌だから!
「ドラゴンにも、ちゅうかくがあるんだよね!?」
「ちゅうかく??あ、痛覚ですね。我々にはあります。我が君にもあるかと言われると、どうなんでしょう?」とビリーヤ。
どうなんでしょう?じゃないよ。そこ、最重要だよ。
俺は危機感を覚えてドラゴン戻った。
「幼気な幼子になんて実験をする気なんだ。マジで怖いわ!」
「ですが、我らは側近として、主の耐久値を知っておくことは重要です」とティルマイルは譲らない。
じゃ、怖いからドラゴンのしっぽの先、ちょっとならいいよ。と妥協したが、赤ちゃんドラゴンでも側近達よりは上位のドラゴンであることに変わりはなく、各々の会心の一撃もまったく傷がつけられなかった。痛みはないな。でも衝撃はある。
ちょっと訓練場の地形変わったぞ?っていうくらいの大惨事の中心で呆然とする。俺、超頑丈だな。みんなからは「だから言ったでしょ」的な視線を受ける。
「……仕方ないか」と人型になる。
「ちょっとだよ。ゆびのさき、ほんのちょっちょね」と念を押して腕を出す。なんで人型にはしっぽがないんだ。指なんて超怖い。
【ザシュ!】と聞こえたと思ったら、もう新しい指が生えていた。
「うちょみたい~!」注射より痛くなかったかも。一瞬過ぎた。
俺の斬られた小さな指は、切り離されると同時にドラゴンに戻ったようだ。血なまぐさい感じがしない、綺麗な鋭い爪のついた指がフワフワ光りながら浮いている。そして、そのまま光が強くなって見えなくなり、光の粒が、空に上っていった。
「先代様がお亡くなりになった時と同じです。上空の黒の森に還っていかれるのですわね」
「黒の森ですか。この実験は訓練場じゃなくて、黒の森に行ってすればよかったですかね?」とカマラテはサリアに、もっともなことを言っている。
俺がドラゴンを見たいから、訓練場に来たかったのに、ドラゴンを追い出しているし。黒の森だったら安全にできた危険な実験をここでやっているし。
どうやら俺の側近はビリーヤだけでなく、その他も天然タイプだったようだ。
天然オールスターズとは、これいかに。




