15.壮観なドラゴン達
側近達は、ちょうどいい機会だから訓練場で、人型の俺に小さな攻撃をしてドラゴン並みの強度があるのかを確認しようという計画を立てたようだ。
こんなプリティーな幼児に攻撃するの?鬼だ。と思ったが、イレギュラーまみれの俺は、今までの側近たちが蓄積してきた経験則が当てはまらないから仕方ないらしい。
という訳で、鬼畜の人体実験、カミングスーン!
当然、それで俺が逆切れするとか、反射で反撃するとかした場合の被害に備えての8人体制なのだろうなぁ。
城壁も城門も超法規的存在の俺は無視できるらしいので、あっという間に訓練場付近の上空に到着。訓練場というから、イメージでは運動場みたいなものを想像していたんだけど、全く違っていた。
ここからでは、ただの広大な森に見える。そして、そこを色とりどりのドラゴンが滑空している。
「にゃんと、ふぁんたじー!!」と思わず叫ぶ。
リアルジュラシックパークだ!自分以外のドラゴンを初めて見たので興奮するのは許して欲しい。城に飾ってある絵画を見てもこの迫力は伝わってこなかったよ!
そして、俺達は訓練場の中央の建物に降り立った。
ここだけ人型サイズ仕様。隣接する芝生のスペースでは休憩中なのか、ドラゴンが寛いでいるのが見えている。
「総員、中央棟ロビーに集合!」という声が魔法で届けられる。
何事かと、キョロキョロした後、芝生のドラゴン達は人型になって、こちらに向かって飛んで来る。
全員集合したタイミングでロビーに下りていく。
そして、お馴染みになりつつある『どよめき』
俺の幼児人型については即時に全ドラゴンに通達されているらしいので、知ってはいるんだろうが、本物を見ると驚愕するようだ。しっかり見て、早く慣れてね。可愛さで悩殺、お尻フリフリ攻撃もしておくか?あ、人型だとしっぽがないからイマイチかな?
サリアがフワフワ浮いて後ろ向きになった俺を、ガシッと捕まえた。何かを察知したかのように、
「我が君、今日は少し控えめでおねがいしますわね」と微笑む。でも目が笑ってないよ。怖い。フリフリは止めておこう。
「本日只今より、我が君が人型の耐久テストをなさいます。万一に備えて、一般人は即時退避、軍府兵士は総員で訓練場の周りを囲んで被害を外に出さぬように!」と北の大将が声を張る。先頭の人が「ラジャー!」と声を出すと一斉に胸に手を当てて全員が「ラジャー!」と声を揃えた。
お~。格好いいな。
「我が君、我々軍府の者が周辺は保護しておりますからな、ご安心ください」
「御前、失礼いたします」と言って、大将たちはそれぞれの部下を引き連れて、飛びながらドラゴンに戻り、四方に散っていく。壮観だ。
「めちゃくちゃ、かっこいいね~!よろしゅくね~!!」と大きな声で叫んで手を振った。テンション上がっているから、はしゃいじゃったのは大目に見て。
飛んでいるドラゴン達が、一斉にこちらを振り返ったのは、壮観じゃなく、恐怖体験だった。ちょっとチビリそうよ。
さあ、気を取り直して、俺の人体実験だ。北の大将は耐久テストなんて、ちょっとコマシな言い方をしてくれたが、絶対そんなニュアンスのものじゃないと思う。
「我が君、それでは、御手を一本切り落としてみますので、再生スピードを確認してまいりましょう」とティルマイル。
「・・・」
嘘だろ、おい。




