14.自由だ~!
翌日俺は、前世、転生、元人間、あらゆるドラゴンに変身できる、とかの内緒ごとをまだまだ抱えているとは言え、ひと段落ついた感じがして、自由な感覚を味わっていた。
「ひとがた、さいこ~!」俺は、城の上空をフワフワ浮きながら、クルクル回り、キラキラエフェクトを飛ばして、喜びを表現していた。
そんな事ができるのも、行動範囲が格段に広がったからだ。
お偉いさん達は、昨日の俺の無防備な幼児人型を見て、
「あんな、見たこともない可愛い主君を、側近たちだけで独り占めしていたとは!」とご立腹だったのだとか。
怖いよりも、俺の可愛さが遥かに上回ったってことだろ?照れちゃうな。
すぐに緊急会議が開かれ、全会一致で、城内(主塔と東西南北4棟)を自由に行き来することが承認された。だがまだ一人で街に行ってはいけないようだ。というのも、俺の一撃では死なない強者しか城内にはいないが、街はそうはいかないからだ。すごくない?城内ってことは、下働きの人達も強いんだよ。
とはいえ、側近が一緒なら街にも行っていいんだって。やったね!
ウキウキで軍府の窓を通り過ぎた。みんな手を振ってくれた!やっほー。
この体格のよい人達が世界の治安を守っているらしい。メインのお仕事は、俺の癇癪から世界を守るっていうのを聞くと、まあ、ちょっと思う事はあるけれど……
それ以外にも、犯罪者の捕縛なんかも担っているんだって。軍隊と警察が合体している感じかな。
この世界の職業の花形はもちろん側近の4人だが、それ以外にもこの軍府の大将、中将などは憧れの役職であるらしい。
そういう人達よりも、あのワンコ体質のビリーヤが強いなんて信じられないけどなぁ。
あ!訓練場!見に行きたかったんだ!
部屋に戻って、
「ビリーヤ~。くんれんじょ!ありゅんでしょ!いこ~!」とお誘いする。訓練場は城外なので一人では行けないんだ。と、思ったら、
「我が君、訓練場は城の外どころか、城郭の外、城壁の向こう側なんですよ。流石に私の一存でお連れする訳には。すみません、今、皆を呼んできますね」と、言って出て行った。
そういえば、ドラゴンになって訓練する場所なんだから、城郭内には無いんだったか。
しばらく待つと、諸々の確認のため、今回は、側近4人と大将4人の総勢8人を引き連れていくなら行ってもいいと言われる。
「いいよ~。みんなでいこ~!」
東の大将は、ムッキムキの大男だが、無類の可愛い物好きらしい。
「こんなに小さい人型が存在するなんて、お抱き申し上げたら壊れてしまいそうですな」と近寄りたいのに、近寄れないというジレンマに陥って悶えている。姫に仕える従者かっての。俺は、
「とべるから、だっこはいりゃないよ」と言った。
「いりゃない。って、何て……お可愛らしい……」あぁ。これは重症だな。俺はムキムキの下僕を手に入れた、かもしれない。
まあ、それを言い出すと、側近にも他の大将にも、幼児人型の俺の可愛さは無双しているんだが。
どうも、ドラゴンに戻ると話し方が普通になるので、見た目は可愛いが、慣れてしまうとそれ程刺さらないようで、若干ドラゴンになると扱いが雑だ。頑丈そうだからそれもあってかな?
いずれにせよ、姫扱いの黒龍王とは、これいかに。




