10.ストレートタイプ
数日城内をウロウロしている俺には気づいたことがある。
なんと、ドラゴンは、前世でいう所の、東洋龍と西洋竜の2種類存在しているということだ。城の壁には絵が何枚もあるんだけど、ドラゴンボール持っていそうな東洋龍がデデーンと飾ってある。蛇っぽいヤツね。
俺は、体が丸っこい西洋竜だから2種類確定だ。
ティルマイルに、
「こっちのドラゴンも格好いいよね!俺、こっちでも良かったな!」なんて、東洋龍の絵を指さしながら言うと、
「ありがとうございます」と嬉しそうだ。
「?」お礼を言われたぞ?
不思議そうな顔をした俺に、説明してくれる。
「そちらの絵は先代様でございます。先代様はストレートタイプでございました。ストレートタイプのドラゴンは数が少なく、先代様がストレートタイプのブラックドラゴンとして顕現なさったときは、ストレートタイプの者は皆、感動に打ち震えたと、よく聞かされたものでございます。私もご覧の通りストレートタイプですので、厚かましくも大変身近に感じさせていただいておりました」
うん。ちょっと情報が渋滞している。
よくよく話を聞くと、ストレートタイプのドラゴンというのが東洋龍。カールタイプのドラゴンが西洋竜のようだ。
そして、びっくり、人型の時のストレートヘアーとカールヘアーでドラゴンのタイプは一目瞭然なんだって。
色と形で、種族とタイプが分かるって、すっごく親切設計だな。
そして、俺はカールタイプのドラゴンで、だから人型の赤ちゃんになった時にクルクル巻き毛だったようだ。
「さて、問題です!俺は、ストレートタイプに変身できるでしょ~か?5秒以内にお答えください!」とティルマイルに出題してみた。
「そうですね。我が君は、色が変えられますので、もしかしたら、可能なのかもしれません」
「やってみよう!」
「お部屋で!イレギュラーな事は、お部屋に帰ってからやってみましょう」真面目なティルマイルがワタワタとしているのを密かに楽しんで、自室に戻った。
そして、結果、俺は、ストレートタイプにも変身できてしまった。またしても、サリアが、目をハートにして、ストレートタイプの俺を撫でまわしている。
同種族とか、同タイプへの愛が半端ないな。これでサリアとお揃いの白銀色に変化させたらどうなるんだろう?
ちょっとした怖いもの見たさで、やってみる。
「・・・」
あ、サリアがフリーズした。と思ったら、俺を抱いたまま、ソファーに倒れこんだ。貧血か?想像以上に『幸せすぎる』というダメージを与えたようだ。自粛しよう。元のカールタイプのブラックドラゴンに戻る。
「危険ですね」とティルマイルが真顔で言っている。
「だね。っていうか、危険って。皆の感覚がちょっと俺と違っていてとまどうよ」と率直に言った。
「我々ドラゴンは同族種の結束が大変強い傾向にありますが、ストレートタイプは、数が少なく、どの種族でも少し疎外感を持っていると言いますか・・・」
「仲間外れ的な?」
「まあ、平たく言えばそうですね。ですので、ストレートタイプの者に関していえば、他種族であっても身内的な感覚がございます」
「ストレートって、そんなに少ないの?」
「100人程が勤める黒龍城の主塔には、私とサリアだけですので、50人に一人くらいかと」
なるほど、それは《ボッチ》な気持ちにもなるな。
「たまに、二人の前ではストレートドラゴンになってあげるよ!」と親切で言ったが、
「・・・心の準備が出来たら、お願いします」と言われた。
心臓でも鍛えるのか?どうやら刺激が強すぎたらしい。




