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1.お願い事は慎重に!

 目を開けると、どこかに閉じ込められていた。

なんじゃこりゃ~っと飛び起きるも、手を見て驚く。爬虫類的なやつだ、しかも短っ!だが、爪もあるし、ちょうどいいか、と、暴れ回ると空が見えた。

 どうやら、俺は今、正に、卵から爆誕したようだ。


 しばし、落ち着こう。頭の中には不思議な事に、情報が入っている。本能的なやつかな。どうやら俺はブラックドラゴンのようだ。

 

 吾輩はブラックドラゴン、名前は、まだない・・・なんてベタなセリフだろう。

 それを思わずつぶやいてしまった俺自身に少し驚いた。


 それはさておき、刻まれた本能情報によると、ブラックドラゴンには飼い主も、守ったり、名前を付けたりしてくれるような親も無いようだ。唯一のブラックドラゴンが死亡すると、黒の森に卵が突然現れて、数カ月後、殻を破って、この世におギャーと誕生するのだ。

 という訳で、名前は、まだない・・・というか自分で付ければいいのか?


 物騒な本能情報によると、暴れまわって、この世の頂点に君臨すればよいのだと分かる。なにせドラゴン、しかも唯一のブラックドラゴンは無双のようだ。

 見た目は?と考えて、背中の翼を動かすと、飛べた。感動。でも翼で飛んでいるというより何か別の力で浮いている感じだ。まさか翼は飾り物か。自分で確認できないほど小さいぞ。

 取り敢えず、水場を探す。何もない延々と続く森だが、小さな湖を発見。

 水面に姿を映すと、可愛い2頭身の、ぬいぐるみみたいな黒い西洋型のドラゴンがいた。

「なに、俺、めっちゃ可愛くない?」

 小さい角までキュートだ。牙は小さいけど鋭い。翼は思った以上に小さく見える。パタパタ動いているが、絶対にこれでは浮力は得られていないな。可愛いけどね。


 本能のままに暴れ回ることに魅力を感じないし、恐怖で無双するより、可愛さで他のドラゴンをメロメロに出来るんじゃない?頂点取りに行ったろ~!とノリノリで思った自分自身を冷静に振り返る。


 どう考えても、ドラゴンの本能に含まれる情報以外の情報が思考に混ざっている。

 そう、「俺」だ。

 う~ん、う~んと頭を振り絞って考える。

「そうだ!俺は死んじゃったんだ!」何かがパチーンと収まるべきところに収まったような安心を感じた。


「俺」は、受験戦争を突破し高校生になって、フリーダムな新生活をスタートだ!と浮かれて楽しんでいた矢先に突然倒れて救急搬送されたんだった!朦朧とした意識の中、

「そんな!陽一がどうして!」という母の悲痛の叫びがどこかから聞こえてきていたっけ。


 数か月後、わずかに意識を取り戻した俺は、あらゆる場所に管のぶっ刺さった自分の腕が、棒のように細くなっていることに愕然とした。

 自分の力では体のどこも動かせる気がしない。

 駆け付けた両親は、俺に、大丈夫だと言うばかりで病状などの説明はしてくれなかったし、聞くことも出来なかった。

 声を出すのも重労働だと知ってしまった。

 驚くのも悲しむのも無かった気がする。ただただ、どうなってしまったんだ?と思っているうちにベッドの横から、機械のアラーム音がけたたましく鳴り響いて、そして遠ざかっていく。

『あぁ。死んじゃうのかな?来世は丈夫な体をください』って願ったと思う。

 倒れるまでは元気な体だと思っていたんだけどなぁ。違ったかぁ。

 

 そして、今ここ。


 丈夫な体っちゃ、丈夫な体だよな。ドラゴンだもの。

 神様っているんだな。そして願い事って声にださなくても叶うんだな。

 そして、お願い事は詳細まで詰めて、練りに練ってしないと、こんな事になっちゃう訳だな。

 それにしても、ドラゴンとは、これいかに?

『これいかに』は、【此は如何に】や、【これは如何に】の派生形?だと思う。クラスの仲間内でお笑い芸人のギャグがブームだったのだが、こんな形で使うことになってしまうとは。

 笑えんな。因みに『予想外のことに出会った時に驚いて自問するときに用いる言葉』だそうだ。ピッタリだな!

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