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# 二


「―本日の基礎技能再評価科目は、以上の六項目となります」


第二教育棟の講堂で、教官補佐が淡々と説明を続けていた。スクリーンに映し出された項目を、霧島は静かにノートに書き写す。


1. 基礎身体能力測定(新基準)

2. 神経反応速度測定

3. 空間認識能力評価

4. 複数情報処理能力測定

5. ストレス耐性評価

6. チーム連携適性評価


「通常の自衛官基準とは、評価項目も合格基準も全く異なりますので、ご注意ください」


綾瀬が小さくため息をつく。施設科で重機を扱ってきた経験から、これらの評価基準の厳しさは想像できた。特に神経反応速度は、人型という特殊な形状を操る上で決定的に重要になる。


「さらに補足があります」教官補佐は一瞬、表情を引き締めた。「この評価は、単なるスクリーニングではありません。各項目のデータは、将来的に皆さんの専用調整パラメータとして活用されます」


鷹見が素早くメモを取る。情報保全隊での経験が、この説明の重要性を直感的に理解させていた。標準機は、パイロットの特性に合わせて細かな調整が可能なシステムなのだ。


「では、第一項目から開始します。移動してください」


三十名ほどの訓練生が一斉に立ち上がる。全員が各部隊からの選抜組だ。その中で、女性は彼女たち三人だけ。しかし、これは想定内のことだった。


基礎身体能力測定が行われる体育館に移動する途中、霧島は思わず建物の構造に目を向けていた。通信科での経験から、この建物には通常とは異なる電磁シールドが施されていることが分かる。おそらく、標準機の試験運用時の電磁干渉を防ぐためだろう。


「霧島曹長、気づきましたか」

振り返ると、中村准教官が立っていた。

「はい。シールドの構造が特殊ですね」

「さすが通信のプロですよ。実は、この建物自体が標準機の電子戦対策の実験場なんです」


体育館の中は、一般的な施設とは明らかに異なっていた。床には精密な計測装置が組み込まれ、壁には大型のモニターが設置されている。天井には、複数のセンサーアレイが見える。


「まずは基礎体力測定から」主任教官が前に立つ。「標準機の操縦において、純粋な筋力は実は重要ではありません。より重要なのは、全身の協調性とバランス感覚です」


測定が始まると、その言葉の意味が明確になった。課される動作は、一見すると単純な体操のような動きだ。しかし、それらは標準機の動作特性を細かく分解し、人体で再現したものだった。


「これ...」綾瀬が小声で呟く。「まるで標準機の関節可動域試験みたい」

「そう」鷹見も頷く。「システム構成図で見た動作パターンと、ほぼ一致してる」


霧島は黙って動作を続けていた。通信機器の設置作業で培った体幹の強さが、ここで活きている。しかし、それ以上に重要なのは、各動作の意味を理解することだった。


「いい動きですね、霧島曹長」

中村准教官が再び近づいてきた。

「各動作の目的を理解した上で体を動かしている。これは重要な素質です」


「通信アンテナの設置業務で覚えた感覚です」霧島は淡々と答える。「不要な動きは、すべてノイズになる」


「そう、その通りです」中村の目が真剣になる。「標準機の操縦も同じです。無駄な動作は全て機体に負担をかけ、さらには戦術的な隙を生む。これは単なる基礎訓練ではない。標準機との対話の、最初の一歩なんです」


測定は続く。モニターには、各訓練生の動作がデータ化され、リアルタイムで表示されていく。その精密さは、明らかに通常の身体測定の領域を超えていた。


「ここまでのデータを見る限り」教官補佐が主任教官に報告する。「対象の80%が許容範囲内。ただし、上位10%に注目すべき傾向が」


主任教官はモニターを見つめたまま、小さく頷いた。

「面白い。経験と身体能力の相関が、予想と異なりますね」


霧島は、その会話の意味を考えていた。彼女たちは確かに、既存の戦力として十分な経験を積んでいる。しかし、標準機は誰もが未経験の領域だ。その意味で、全員が同じスタートラインに立っているのかもしれない。


「次の測定に移ります」主任教官の声が響く。「神経反応速度測定の準備を」


体育館の照明が、わずかに明るさを増した。

"#"が付いていますが、そもそもマークダウンで記述しているからです。

理系の人なら同意してくださると思いますが、「なろう」でも標準的にマークダウンを採用していただけないかと。見た目は自由に読み手がカスタマイズすればよろしいのでは、と思うのは私だけですか?

序章のときは消したくせに・・・正直申しますと直すのが面倒という・・・・ごめんなさい。

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