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十六

# 十六


防衛省技術研究本部特別会議室。窓からは、夕暮れの市街地が見下ろせる。


「本日の試験データです」


北條機甲研究部長は、目の前に広がる立体ホログラムを凝視していた。そこには三機の標準機から得られた初期同調データが、これまでにない複雑なパターンを示している。


「従来の統計から、明らかに逸脱しています」

技術班長の声には緊張が滲む。

「特に、三者三様の同調パターンが示す相互干渉は」


「予想通りだ」


北條の言葉に、部屋の空気が凍る。


「いや、正確には」彼は言葉を選ぶ。「標準機が、予測していた通りというべきか」


画面が切り替わる。霧島の通信理論的アプローチ、綾瀬の工学的視点、鷹見の情報分析的手法。それぞれが示す独自の同調パターンが、しかし不思議な調和を生み出している。


「集団的な学習効果です」

特別技官の井波が前に出る。「個々の標準機が、パイロットとの対話を通じて独自の発展を示す。しかし同時に、三機の間で一種の『共鳴』が」


「まるで研究者たちが、異なる視点から同じ現象を観察しているような」

北條がつぶやく。


「しかし」防衛技監の声が重く響く。「この『発展』は、我々の管理下に置けるのか」


質問の本質は明確だった。標準機という存在が、当初の想定を超えて進化を始めている。それは可能性であると同時に、潜在的なリスクでもある。


「彼女たちの専門性が」井波が説明を続ける。「むしろ安定要因として機能している可能性が高い。通信、施設、情報。それぞれの分野での経験が、標準機との健全な関係性を」


「つまり」北條が言葉を継ぐ。「パイロットの多様性こそが、標準機の発展を適切な方向に導く」


「しかし現場は」技術班長が懸念を示す。「特に古谷部隊が、この方針に」


「古い世代の戦術観は」北條は断固とした口調で言う。「もはや通用しない。標準機は、単なる兵器ではない。我々は、未知との対話を始めているのだ」


立体ホログラムが、新たなデータを展開する。三機の標準機が示す反応は、確かに制御不能なほど突飛なものではない。むしろ、人間との関係性を通じて、より深い理解を示しているかのよう。


「次の段階に移行する」

北條の声が、決定を告げる。

「実戦形式の訓練を開始せよ」

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