表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/30

十二

# 十二


鷹見の意識は、データの流れを追っていた。


情報保全隊で培った分析眼が、神経同調試験装置の特性を読み解こうとする。電流パターン、神経伝達の経路、そしてフィードバックの構造。全てが、従来のシステムとは異質だった。


「同調開始します」


最初の信号が、彼女の神経を伝わる。その瞬間、情報保全隊での経験が警告を発した。このデータストリーム、あまりにも生々しい。まるで―


「同調率、8パーセント」


「力を抜いてください」整備班長の声。「分析しようとしすぎです」


その指摘が、彼女の中で反響する。確かに、全てを理解しようとする習性が、かえって同調の妨げになっている。


「データは」主任教官が静かに言う。「時として、理解を超えて存在する」


情報分析の限界。それは情報保全隊でも、時として直面する課題だった。全てを分析し、理解することは不可能。時には、ただ情報の流れに身を委ねる必要が―


「同調率、19パーセント」


体が、データそのものになっていく感覚。情報の海に溶け込むような、しかし決して主体性を失うわけではない。


「29パーセント。上昇傾向」


見えてくる。これは分析の対象ではない。対話のための、新たな言語。情報保全隊で扱った暗号解読に近い。しかし、それは単なる符号化された情報ではなく、生きた意思との。


「同調率、51パーセント。安定しています」


試験装置から解放された時、鷹見の分析眼は新たな視点を得ていた。標準機を、単なる分析対象として見ることはもはや不可能だ。


中村准教官が三人を見渡す。「それぞれ、興味深い同調パターンを示しました。通信、施設、情報。異なる経験が、異なる対話を生み出す」


整備班が記録を確認している。データこそ異なれ、三者三様の同調は、いずれも基準を満たしていた。


「標準機との対話に、正解は一つではない」主任教官の言葉が、朝の空気を震わせる。「むしろ、その多様性にこそ、可能性が」


整備班が新たな準備に入る。これは始まりに過ぎない。実機との対話は、より深い理解を求めてくる。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ