「こいつ本当に徳之島の奴だわ」
「こいつ本当に徳之島のやつだわ」
腹が立つ。
「大丈夫でやんすか」
「まあ俺が抑える」
五月の熱いころ、徳之島高校から練習試合が申し込まれた。
マウンドに立っている。
マネージャーののぞみさんを悪く言うなんて許せない。
闘志がみなぎる。
イアがせっかく覚えた球種を全部教えたそうだ。
頭にくる。
そうだストレート真向勝負だ。
バッターボックスは峯田。
一番である。
「ふう」
息を整える。
高く振り上げ、殺さんばかりに投げた。
「ストライク」
調子はいいな。
「あいかわずだな」
「お前らもだよ」
俺の”例の球”を教えるなんて。
大体の球種はできるが、ツーシームの難点がある。
豆ができるからあまり投げたくはない。
硬球だと滑るから、つぶれて水が出て滑り止めにもなって、さらに痛みがあってもいいんだがな。
「これ打てるか?」
投げた。
勢いあまる。
足が上がったことが視界で確認できた。
「ボール」
うーん高めか。
「早すぎるぞ」
「まああな」
打てねえかな。
こいつらじゃ。
フォーシームは反則級かな。
強化した俺に驚いたか。
「目が点になっているぞ」
「いつからそんなにできるようなったんだ」
そういえば俺は補欠だった。
だが今は違う。
「ほらよ」
ファールになった。
「やるじゃねえか」
「そうだな」
俺に感化されたか。
山田の指示もどうでもいい。
運命の三球目。
「ストライク」
「よし」
「お前すごいやつになったじゃねえか」
「あいつに借りがある」
「お望みどおりだ、次だよ」
試合中は会話はしちゃいけない。
だが、昔の名残だと思えば、両監督納得している。
「へっへ」