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成染佑次

 与論島に着いた。

 俺は荷物を置く。

 そしてこんなことを思いついた。

 彼女と野球どっちをとるか。

 高校と言えば、青春。

 そして、野球と言えば彼女。

 いいや、そんなことはどうでもいい。

 それでもわかったことがある。

 徳之島より小さい。

 いいや本土より小さい。


「博士、例の少年が現れました」

 博士は冷静な表情でこう淡々と言い放った。

「安心することなかれ」

 ひげを触る。

 彼には重大な任務があった。

 それは彼を自衛隊に招待した後、無双させるためだ。


「ああ、やっとついたぞ」

「そうでやんすね」

 だれお前。

「オイラは山田でやんすよ」

 いかにも眼鏡をかけていた。

 身長は俺よりも少し小さい。

 しかし体格はできていた。

「そんなことよりゲームでやんすよ」

「俺は野球をするんだ」

「ゲームゲーム」

 無我夢中に彼が動かしているのはスマホ。

 パズル&ドラゴンズである。

 こんな調子で大丈夫なのか。

「お、早速友達ができたようだな」

「しらねえやつなんだけど」

「ゲー友でやんす」

 眼鏡が光った。

 なんと言うことだろうか。

 神はこいつを用意知っていたのか。

「一応フレンドになっておくよ」

「ありがとうでやんす」

 ふふ、まあ友達、まあこのかたできたことはない。 無論彼女もだ。

「俺、友達いなかったんだけど彼女もいない」

「童貞でないでやんすよ」

 まじかよ。うらやましい。

「まあゲームの中の話でヤンスが」

 ががーん。

「こんどおすすめのエロサイト教えてくれ」

「いいでやんすけど、条件があるでやんす」

「なんだい?」

「一緒にゲームをしてくれないかでやんす」

「ああ、たまにはやろうか」

 そうして分かれたのであった。

「もう話したのか」

「そうだね、与論島にきて最初の友達だよ」

「山田君か」

「眼鏡の山田でやんす」

 こいつ帰って無かったのか。

「よしゲーセンいくか」

 オヤジは大きく言った。

「え、いいでヤンスか?」

「いいよいいよ」

 徳之島特有のやさしさが出てきた。

 これがしびれる出会いか。

 お父さんの背中が頼もしかった。

「やまーだ電気」

「あれ、へんな声がするでやんすな」

「きにしないでいい」

「きにするな」

 お父さんと俺は一心同体で言った。

「これはいいガールでやんすね」

 おもむろに入っていくのは、エロゲコーナー。

 わあ、俺は勃起しそうだ。

「けしからんな」

「何がいいかな諸君」

「おいしいガールでやんす」

「これだな」

「オイラはこれでヤンス」

「じゃあこの二つ」

「ええ買ってくれるでヤンスか?」

「まじかよ父さん」

「おなかに隠して持って帰りなさい」

「ありがとうございますでヤンス」

「ありがとう父さん」

 そうして三人は帰った。


 翌朝。

「眠れたか、キャッチボールでもしないか」

「うん、今日もキャッチング頼む」

 スポーツ靴に変えた。

 慣れない環境、下は人工の芝生。

 家はお父さんと二人の家だ。

 お父さんは大工をしていて、かなり儲けている。 腕も良い。

「いくぞ」

 パンッ。

 高めだ。

 どうも弾は150キロだが、上にいく癖が直らない。

 強制したところでどうにもならない。

「次はフォーシーム」

「おうよ」

 ダメだ、これもうまくいかない。

「高めが打ち損じることもある」

「そうかな」

「指先だ」

「爪は切っている」

 投げた。

 今度は指先にちょっとだけ力を入れたイメージで。「やればできるじゃないか」

 おおよそ、いままでボール際までだったが、そんなことはなかった。

 投げた後を見てこなかったような構えた位置に入り込むフォーシーム。

「フォーシームを鍛えなさい」

「わかったでやんす」

 よこで指立てふせをしていた山田。

 いいやお前じゃない。

「ちょうど良いところだ、どうだ、山田君、一緒にキャッチボールでも」

「わかったでやんすよ」

 五割のイメージで投げた。

「おお、ふつうでやんすね」

「なんだと」

「FPSをやっているとこんなものハエみたいなものでやんすよ」

「わかった」

 今度は八割の力で投げた。

「うんスジはいいでやんすね」

「わかるんだな山田君」

「そうでやんす、昨日からどうしているのか気になってきたからやってきたんでやんす」

「それは頼もしい」

 悲しいのはこいつが嘘をついたことだ。

 隣の家だぞ。

「なあ、お前となりの家だよな」

「そうでやんすねえ」

「ばれちゃった」

 そうしてお父さんも知っていることに悲しくなった。

 まあいいか、うれしくなってきたし。

「そういえばお名前きいてなかったでやんす」

「成染 幸隆、子供は佑次」

「わあかっこいい名前でヤンス」

「おkまかせろ、狙うのは簡単でな」

「それは別の佑次でやんす」

「彼女を作りたがるからよろしく」

「はあなんでやんすか」

 意気消沈した。

 山田にはお世話になりそうだ。

「幸隆さん、なんでこんな島にきたんでやんすか」

「この島を咲かせたいと思ってな」

「それはかっこいいでやんす」

「たしかにいかにも」

「うんうん」

 こうして始まった、与論島の暮らし。

 いろんなことがありそうだが、まあ大丈夫だろう。

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