一話 ~新たな世界~
書き直しをした日付はあとがきに書いておきます。
『おっ、こんなとこに本屋あったんだ!!』
今までこんなところで本屋を見たことなんてなかったんだけどなぁ…。
いま、俺がいるのは入り組んだ路地の先にある、廃れた本屋。
でっかく《本屋だよb》という看板がある。
まぁ、誰だってこんな自己主張の激しい本屋、目に留まるけど。
いまは平日の午後1時ごろ。
この時間、特別なことがなければ、普通の学生は学校で授業を受けている。
ちなみに、16歳の高校生である『柊壱夜』はいま、この時間に学校の外にあるこの場所に立っている。
その理由はひとつしかない。
そう、サボりだ。
壱夜は毎日の学校がつまらないわけではない。
かと言って楽しいわけでもない。
つまらなくもなく、楽しくもない毎日が続く。
それに飽きたのだ。
だから、壱夜はときどきサボってしまう。
いつもは友達とサボるのだが、今日はいない。
早くも単位が足らなくなったらしい。
そんな友達をばかだなぁと感じつつ、壱夜は本屋の戸に手をかけた。
ガラガラガラっ!!
戸を開けると同時にほこりが舞うのが目に見えた。
店の中はほこりっぽかったが、大きな本棚が3つあり、さまざまな本が並んでいた。
まぁ、これくらい本があれば午後まで時間をつぶせるか。と思っていると
『いらっしゃい』
奥からしわがれた声が聞こえ、そっちを見ると白髪頭のおばちゃんがいた。
…さすが、こんな大通りから離れたところに店を構えている人だ。
時代を感じさせる顔。
しかし、その顔がなんとも不気味。
(どれだけアンティークなんだよ…。)
そんな人類の宝であるばばぁが一言
『兄ちゃんいい男だねぇ、アタシが10年若かったら・・・どうだいまからアタシとホt・・・』
『全力で結構です!!!!』
その顔でなんてこと言いやがるっ!!
俺はゲンナリとして、自分の容姿について考える。
俺はそんなにカッコよくないのにどうしていつも。
と小声で言うが、実際は違った。
壱夜が気づいていないだけで、目は鋭くもやさしさを感じさせる二重。
鼻もすっとしていて、背も高く、痩せていたが、それでいて筋肉質だった。
髪の毛は茶色だが地毛、髪は少し長めだが、爽やかな感じだ。
うん、イケメンだね。
作者は殺意を抱くよ!!!!
『それよりおばちゃん、なにかいい本ない?』
俺は最近入荷した本なら人気な物があるだろうと思って聞いてみた。
『あるある。ここにエロ・・・冗談じゃよ。右の棚から探してみたらどうじゃ?古いが良い本ばかりよ。』
俺は入荷した本を聞きたかったんだけど…という言葉が出かかったが、そんな言葉を飲み下し、右の棚に目を向ける。
たしかに、古そうな本だが、棚とは違い、本はほこりを被っていなかった。
『さんきゅー』
感謝の言葉を口にし、本を探し始める。
(最近マンガばかりだからたまにはこういうのも…)
などと考えながら。
本を探し始めて約5分ほど、その間にさまざまな本を見つけた。
さすがに古いだけのことはある…と誰もが思うような本もあった。
そんな中で壱夜はある一冊を見つけた。
『新たな世界を… か、面白そうだな』
そう思い、手にとって読み始めた。
すると、一番最初のページに
「主は新しい世界を見たくはないか?もし見たければ力をやろう。主が新たな世界で生きていくための力を…」
と書いてあった。
その下に
見たい 見たくない
そう書いてあった。俺はなにかに操られるように”見たい”を人差し指で撫でてしまった。
指が自然に動いてしまったことに壱夜は動揺しかけた。
その瞬間、頭の中で
『よかろう、では行こうか。』
という声が聞こえた。
次の瞬間、俺の視界が真っ白な光に満たされ、俺はゆっくり意識を手放した。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
どすんっ!!!!!
『イテっ!!!!!!!!』
突然背中に痛みが走り、俺は目を開けた。
『ここ・・・どこだよ。』
背中に鈍い痛みを感じつつ目を開けた壱夜。
自分の目に写るものが信じられず、目をこすり、頬を引っ張る。
なぜなら、眼前には暗い夜空があり、そして、光を放っているほうを見上げると青色の月が目に写ったからだ。
どこだよ、青色の月??
そんなの存在したのか??
『さっきまで、本屋にいて…それで本を開いて見たいって触ったら…』
声に出して、状況を確認する。
そうしなければ、思い出すことさえできないほどに動揺していた。
そして、壱夜は飛び起きた。
『俺は違う世界へ飛ばされたのか!?!?!?』
すると、近くでがさっとする音がした。
そちらを見るとそこには不思議な服を着た女の人がいた。
『どうしました?? なにか、鈍い音がしたので駆けつけたのですが…』
俺はその女性をよく見る。
上から85、56、80。うん、嘘だ。俺にそんなことがわかる特技はない。
でも、出るところは出て、締まるところは締まっている。
髪の毛は肩にかかるくらいで、雪のような白銀だ。目はくりっとしていてリスのようだ。
背は160cmくらいでとても可愛い。
こんなときにこんなことを考えてしまうなんて…男の性にため息をしつつ
『大丈夫です。 少し、鍛錬をしていて…』
鍛錬??と突っ込まれないうちに自己紹介をしてしまおう。
『俺は、柊壱夜です。あなたの名前は?』
『私は白矢雪菜です。』
向こうは少し俺を警戒している。手に持った杖のようなものをこちらへ向けているからだ。
改めて周りを見てみる。こんどは視界を若干下に向けて。
そこには草原が広がっていて、その先に都市のようなものが見える。
そして、やはり空には青い月。
『よろしくお願いします。 この世界に日本、という街はありますか?』
俺は異世界なのでは?という疑問を取り除くため、勇気を持って聞いてみる。
『ニホン…ですか? 私は聞いたことはないですけど…』
この答えで確信に変わってしまった。
俺は、異世界にきたんだ。
否、来れたのだ。
『そうですか、雪菜さんは魔法とかを使うのですか?杖をこちらに向けていますが…』
形が攻撃に向いていないので、異世界=魔法というRPGの思考から聞いてみた。
『あ、杖を向けたままでしたね。 すみませんでした』
杖を上に向け、手を顔の前でパタパタしている。
そうやって謝る雪菜さん。可愛いーー!!
『私はブルメルに住んでいるハンターです。よろしくお願いしますね』
丁寧にお辞儀をしてくれるので、俺もあわててお辞儀を返す。
『壱夜さん、ケガはしていませんか??』
再び、心配してくれる雪菜さん。
『ちょっと肘を切っちゃっただけですから』
テレながら頭を掻いているフリをする。
そのとき雪菜さんがボフっと音をたて顔を真っ赤にした。
『そ、そうですか////』
照れている壱夜が可愛くて赤くなったとは言えなかった。
『俺、道に迷ってしまって、泊まるところを探したいのですが…ここから町までどう行けばいいか教えてもらえますか??』
俺がそう言うと、雪菜さんは微笑みながら
『もしよかったらブルメルの街へ行きませんか? 町に着けば簡単な手当てもできますし、泊まるところも探せます』
雪菜に連れられて歩き出す。
壱夜は雪菜に感謝しつつ、ブルメルの町を目指す。
雪菜の白銀の髪が描く道を辿りながら。
書き直しって大変だぁ。
《11月23日》