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第8話『ゴック・ドゥーの一族』



◇◇◇◇◇



 長かった停学期間が終わった。

 やっと今日から学校に通えるんだ!

 超楽しみ!


 俺は従姉に『お勤めご苦労様でした』と言われながら見送られて家を出た。




 学校に着いたぞ。

 自分の下駄箱を忘れてて少し焦ったけど無事に見つけられたぜオウイェー。

 まずは職員室へ向かう。


 停学明けは最初に寄ってねって言われてたのよ。


 職員室で担任の先生と面談。ちょっとばかし話をする。先生から非常にありがたい御言葉を頂戴して数分後に退室。


 俺は教室に向かった。




「…………」


 一ヶ月ぶりに自分の教室に入った。

 おお、同年代の少年少女が集まっている教室だ……。

 足を踏み入れることで実感する不慣れな空気。


 地元の分校とはまったく違う人口密度と景色。

 今まではテレビや漫画や小説のなかでしか知らなかった世界。

 圧倒される。だけど、ドキドキもしている。


 本当に俺は都会の学校に来たんだ……!


「…………ん?」


 な、なんだろう。

 教室に入った瞬間にすごく視線が集まって、あっという間に目を逸らされた。

 努めて見ないようにされている気がする。


 得体の知れない疎外感を覚えながら、俺はふと思った。

 俺の席はどこだ……? 入学式で出席番号順に座った席は覚えている。

 だが、当時とは前後左右の顔ぶれが違う。


 恐らく席替えが行われている。

 新しい俺の机の位置がわからない。

 ど、どうすれば――


「お前の席は窓際の列の一番後ろだよ」


 困っている俺に話しかけてくる者がいた。

 須藤だった。

 入学式で会話をした、あの須藤であった。


 久しぶりだなぁ。


 一ヶ月もご無沙汰だったが、俺のことを覚えていて声をかけてくれたのだ。


 初っ端から停学していた俺にとって、このクラスで知っているのは入学式で会話した彼だけである。


 できれば他の級友たちと顔を繋いでくれないものかと期待する。

 そういえば街を案内してくれるとか言ってくれてたっけ。

 それもまた楽しみだ。


「新庄、お前やっちまったな……」


 須藤が大きく溜息を吐いた。

 俺は何のことかわからず首を傾げる。

 もしかして停学になったことか?


「そうだな、休んでいたぶん授業を受けてないから追いつくのが大変そうだ」


「違う、そうじゃない!」


「へ?」


「お前は花園一派の恨みを買っちまったんだよ……」


 須藤曰く。

 不良ってのはメンツをとても大事にする生き物らしい。

 ボスの花園が入院しているとはいえ、舎弟どもがやられたまま黙っているはずはない。


 復学したからには必ずや俺に報復を仕掛けてくるだろう――と。


「みんな、お前が教室に入ってきたときに目を逸らしただろ? 関わりたくないんだよ、四天王の不良に睨まれてるやつとは……」


 須藤は声を顰めてそう言った。


 なるほど、さっきの違和感はそういう腫れ物扱いが引き起こした現象だったわけか。


「えーと、四天王って確か……香取慎吾ってやつだっけ?」


「花鳥風月な。しかも、お前が喧嘩を売った花園は実家がヤバい」


「実家?」


「そうだ、ヤの付く自由業だ。花園はそこの跡取り息子なんだよ」


 どうやら俺が大怪我をさせた四天王の花園はゴック・ドゥーの一族だったらしい。

 マジでか……。だからみんな余計にビビって寄ってこないのか。

 でも、須藤は話しかけてくれた。


 つまり、他のクラスメートとは違って俺とまだ――


「オレだって辛いんだ……。けど、ホントマジで。ヤーさんに目をつけられて人生終わるのだけは勘弁だから! そういうわけですまん!」


 須藤はシュタタタッと華麗に去っていった。

 俺がいない間に作ったらしい他の友人たちのもとへ……。


「…………」


 ふっ、呆気ないもんだ。

 まあ、入学式に少し話しただけの関係だから仕方ないか……。

 そもそもあいつの制止を振り切ったのは俺だし。


 自業自得と割り切るしかない。


 ぐすん。


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