第四章 一筋の想い
あれから一颯は空をしばらく縁側で見て居た。夕方になり、もうそろそろ風も冷たくなって来て家の中に入ろうとしたその時に、母の明里が「一颯さ、今から知り合いの同僚に可愛い女の子が居て紗夢美ちゃんって子が居るんだけど、その子優しくて良い子なのよ」と言われて、一颯は呆れて居た。
一颯が「どうせ、女なんて俺と付き合っても素気なく捨てられて大切にされないのが眼に見えて分かるよ」と冷たく返事を返した。
明里が「もう、折角、その子は綺麗で可愛いのにこの話をお断りするなんて勿体無いわね」と凄く残念そうな顔をして居た。
一颯が「しょうがないだろう?好きだった子に振られて傷心中なんだから、もう放っといてよ」と少し嫌な顔をして居た。
明里が「しょうがないわね?じゃ、断る?」と聞かれて、一颯が飲み物を全部飲み干して、一颯が「やっぱり、俺は行くよ。どうせ、暇だしさ」と言って、明里に返事を返した。
明里は「一颯が行くと言うので、明日予定は変更なく、お見合いの話を進めて」と言う電話をかけた。紗夢美の母の理香が「そう、良かったわ。じゃ、そう言う事でよろしくお願いします」と返事に答えた。
一颯が「このお見合いに参加するのはこれで最期だからな」と何処となく疲れたような声で話をして居た。
次の土曜日に着ていく服を鏡の前で選んでいた一颯は、赤いチェックのシャツと黒いズボンに決めた。
コーディネートが終わり、洋服を片付けた。
赤いシャツと黒いズボンはハンガーに掛けておき、アイロンでシワを伸ばした。
次の土曜日は「どんな子に会えるのかな?」と期待を胸にドキドキして居た。
お見合いの集まる時間は朝の10時と決まり、一颯は櫛で髪を溶かし、洋服に着替えた。
そのお見合い場所はロストルと言う高級なレストランで洋風の食事を出す事で有名だった。
一颯が「今頃、雪乃は何をしているのだろう?」とお肉を食べながら考えていた。
紗夢美が「一颯さん、話聞いていますか?」と声を掛けられて、一颯が「あ、すみません。ちょっと考え事をしていて。」と謝った。
紗夢美がもう一度「一颯さんには好きな人って居ますか?」と聞かれて、一颯が「好きな人が居ないって言ったら嘘になりますが、今も好きな人は居ますよ」と言う紗夢美の返事に答えた。
一颯は、硬い肉を切り、ご飯と肉を交互に黙々と食べていた。
紗夢美が「そうですか?それは残念です」と残念そうな顔をして、食事を食べ終えて口を拭いた。
そのお見合いの後に、一颯が「今寄りたいところがあるから、先に帰って居て」と話を明里にして、お見合い会場から、雪乃の家に向かって居た。
雪乃が、外で洗濯物を干していると一颯が「あ、今話したいことがあるから良い?」と聞かれて、家の前の椅子に座って話を始めた。
一颯が「やっぱり俺はお前じゃないと駄目なんだ。だから、雪乃、結婚を前提に付き合ってくれないか?」と雪乃に告白をした。
そして雪乃も「しょうがないわね。私もあなたの事が気になっていて、好きだから付き合いましょう」と告白の気持ちを受け取り、2人は晴れて両家の親に話をして、2人は末永く幸せに暮らした。