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泰香はなろうの使い方が分かっていませんでした
泰香はなろうを始めることにした。
いま通っている小説教室で『なろうより習え』と教わっていたこともあり、泰香は最近までなろうのアカウントを持っていなかった。ある日、小説教室のお友達から、ネットユーザーの間では『習うよりなろう』と言われていることを聞き知り、泰香の心は揺れ動いた。教室に通ってもなかなか着想も構成も文章も上手くならなかった。教室には内緒でなろうを始めようかしら。
泰香は、なろうに登録した。初めての小説投稿サイトに戸惑った。編集や投稿の仕方に慣れていなかった。『習うより慣れよ』との諺に則り、先ずは何でもいいので投稿してみることにした。
「えいっ」
力を込めて投稿ボタンを押した。すっかり安心した泰香はそのまま眠ってしまった。
そこまで気合いを入れなくても良いだろう。おまけに中身のない話を投稿したまま寝てしまうなんて。卑猥な笑みを浮かべた赤ら顔の男の姿をしたしろくまが、ぽそっと呟いた。