初戦闘
まずこの身体の動作確認をしよう。
筋肉や血管、神経がない代わりに魔力で身体を動かす感じだ。
魔力を血流のように全身に巡らすことで、人のような動きができた。
ただし魔力量は最低ランクにより、おおよそ何も鍛えてもいない成人男性ぐらいの筋力と同等ぐらいの力しかない。まぁこれについては筋肉によらない技を極めるためには好都合だし、魔力量を意識して増やそうとは思わない。
眼球などもないため、五感についても骨からの振動を魔力を通し魂に感じさせる感じ。
石を殴った感じ、痛みはなく石の方が割れたため骨として存在するため生前よりだいぶ丈夫にできているみたいだ。
動作確認後は実際にモンスターと戦ってみることにした。標的はゴブリン。墓地の近くに10数名からなる小さな集落を作っているので最初の敵としてはちょうどいいだろう。
最初は正面から戦いを挑むことはせず、一体一体倒して行くことにした。
気配を潜める近づいて行くと、スケルトンならではのメリットが結構あることに気がついた。
まず関節の稼働域が人間以上である。骨を魔力で動かしているため如何なる体勢だろうと無理なくこなせる。むしろ筋肉がないため異常なほどコンパクトに身体を畳めるため潜んで近くにはこれ以上ない体だろう。次に魔力で五感を管理しているため夜朝関係なくハッキリ見える点。更に細かな骨の振動で距離や相手の動きなどを把握できるためとても便利だ。
スケルトンであるメリットを最大に活かしつつ、一匹でぷらぷら見張りをしていたゴブリンに音もなく近づき後ろから首に正拳突きを叩き込む。肉を裂き、その奥の首の骨を砕きゴブリンは悲鳴をあげる事もなく倒れ込む。私の骨強度が高いため特に拳の骨が欠ける事もなかった。再び気配を潜め、別の見張りに近づき、今度は蹴りを首に叩き込む。技の鋭さもあり、首と胴体が分かれる形になった。
その際の血の匂いで異常を感じたのか、他のゴブリンが騒ぎながら、棍棒や欠けた剣、弓などを装備し出てきた。
私はその場に構える事もせず、自然体にたたずむ。
まず弓が飛んできたが、これは私にはあまり効果がない、肉がないため標的となる部位がかなり絞られ幾つかは骨の隙間を通し難なく回避する。また一部は弓を軌道を変え、別のゴブリンに向かってより勢いをつけ返す。2〜3匹返した矢で倒したら、弓が効かないと学習したのか直接的に襲いかかってきた。
私は力を抜き、魔力を乱す事なく全身に流し待ち構える。
最初に接近してきたゴブリンが手に持った棍棒を振りかぶってくる。おそらく受ける事もできるが、受ける行為が体の強度に依存するところがあると思い、攻撃は回避、流す、捌くなどを技術を持って対処すると決めているため、棍棒を当たるスレスレで回避し、横を通過する棍棒に自身の力を添え、2番目に到着したゴブリンの頭めがけ軌道を変え叩き倒す。
なぜ味方に棍棒を叩き込んでしまった理解できず固まっているゴブリンに拳で殴り倒した。次にきたゴブリンは掴みかかってきたので今度は回避せず掴まってあげる。ゴブリンの思惑ではそのまま押し倒して袋叩きにするはずが、如何にゴブリンが力を入れようと私は微動だにしない。これは体重が重いからではない。むしろ骨だけなのでかなり軽量の体だ。これも武術の一つに体重を操作するものがある。例えば人がジャンプして力を抜きながら着地するとその瞬間、重力の力を借りることができ体重が何倍にも重くすることができる。骨である身を利用して背骨の隙間を収縮させることでジャンプという大きな動作を必要とせずに、同じ事を再現できる。動かせず戸惑っているゴブリンの顎に下から垂直に蹴りを入れ倒しつつ、ゴブリンの体を宙に浮かす。浮いた物体はいかに重いものだろうが、力の流れを操作できる者にとっては重さが無いと同じ事であり、30kgはありそうなゴブリンの足をそのまま掴み別のゴブリンに向けて投げ飛ばす。
元の半分ぐらいの数になり、得体の知れない技を使う私にこれ以上やっても勝てないとふんだのかゴブリンはそれぞれチリジリになり逃げ出し、私の初めての戦いは終わった。