スライムという未知なる生物
魔王はスライムを侮っていた。
自身の目で確かめたはずなのに、まだ侮っていた。
スライムが武器や装飾品に変身でき、ぶつけると凍る玉や投擲や毒攻めもする。
きっと何者も知りえない事だったに違いない。
「宰相……私は城にスライムの研究室をつくる。
室長は任せるからスライム達の技能を有効利用するように。」
魔王は宰相に丸投げした。
多忙を極める宰相に更なる仕事を課し魔王はその場を後にしたが、宰相は魔王の消えた方を呆然と見ていた。
「ひとまず、各種スライムを魔城に駐在させたいのだが。」
「定期的に集落に戻れるのであれば我らが残りましょう。」
「良かろう。」
こうして、魔城にスライムの為の研究室ができた。
スライム達は大きな第一歩を踏み出した事を喜んだ。
次の日から数名の研究員が派遣されスライム達の研究が始まり、まずは1匹ずつヒヤリングされ各自の能力の確認がされた。
ノーマルスライム:透過Lv1
ウォータースライム:液体操作Lv1水生成Lv1
スノウスライム:液体変化Lv1降雪Lv1
ファイヤースライム:炎操作Lv1体温操作Lv1
ツリースライム:植物操作Lv1種子成長Lv1暴走Lv1
メタルスライム:鉱物生成Lv1硬化Lv1
ポイズンスライム:毒生成Lv1
ストーンスライム:土操作Lv1岩生成Lv1
共通能力:テレパシーLv1、擬態Lv1、融合Lv1、不死の戦士Lv1
「「「「「……」」」」」
研究員達は驚きを隠せないでいた。
スライムと言えば最弱、価値のないゴミとして研究者達の間では居ないものとして扱われていた魔物で、そんなモノを研究するなど宰相の気が知れないと思っていたが、能力確認してみればとてもゴミとは思えない結果が出たのだ。
「とりあえず口外禁止だ。俺は宰相殿に報告してくるからその間に実際に技を見せてもらってくれ。」
「「「「はい。」」」」
研究員たちは手分けしてスライム達の能力の確認を始め、副室長を務めるワーウルフのガウェインは宰相の元へ走った。
ガウェインが宰相の本を訪れると、宰相は紅茶を飲み短い休憩をとっていた。
「ガウェイン殿、慌ててどうしたのだ。」
「宰相殿、これを見てほしい。」
ガウェインはスライム達の調書を宰相に渡した。
受け取った宰相は目を通していき読み終わると大きなため息をついた。
「この結果は本当ですか?」
「まだ自己申告だが嘘をつくようにはみえん。
この不死の戦士というスキルについて確認したい。
これはアンデッド族の王が受け継ぐものだと認識していたのだが違っただろうか。」
「ええ。その認識に間違いはないはずです。」
「…とりあえず口外禁止にはしてきた。」
「素晴らしい判断です。しかし……Lv1とはいえ特殊なスキルが多すぎる気がしますが……。」
「それについては俺も賛成だ。液体操作や鉱物生成とか範囲がおかしい。」
「なぜスライムがテレパシーや暴走を持っているのかも不思議です。」
「これ……レベル上げられたら上位魔族にも引けを取らないんじゃないか?」
それは、二人の仕事が増えた瞬間だったに違いない。
二人は深い深いため息をついた。