ツリースライムの場合
会議が終わって一週間経ったがツリースライムのツリーはまだ集落に着いていなかった。
会議をしていた場所は人間が滅多に来ない森の奥で丁度日差しが暖かい日光浴には適した場所だった。
そんな絶好の日光浴スポットからの移動はツリーには酷。
空が曇り、日光浴が出来なくなったのは会議が終わった二日後でツリーは仕方なく集落に向かって動き出し、昼間は日光浴して夜に移動する事五日間、やっと四分の三のところまで帰ってきたところだった。
「この場所…気持ちいいなぁ」
またベスト日光浴スポットを見つけてしまったツリーは暫く動きたくなくなっていた。
そんなところに一匹のストーンスライムが通りかかった。
「貴方は……ツリースライムの族長さん?
こんな所でどうしたんですか?」
「君は……誰だっけ。」
「ストーンスライムの族長、ストーンの娘のスートンです。」
「そうなんだぁ。僕は日光浴をしてるところなんだぁ。
君もどうだい?」
「結構です。日光浴だなんてツリースライム族は随分余裕なんですね。」
スートンは敵意を込めて言葉を発したがツリーには全く効いておらず、ツリーはキョトンとスートンをみていた。
それにイラだったスートンは声を少し荒らげた。
「会議で課題が出されてるでしょ?!なんでそんな事してるのよ。」
「僕まだ集落に帰れてないから焦っても仕方ないしぃ。」
「はぁ?!もう一週間よ?!貴方の集落まで三日かからないじゃない!!」
スートンは強制的にツリーの背中を押し集落まで連れて行った。
入り組んだ茨が集落の入口を塞ぎその前に二匹のツリースライムが日光浴をしながら立っていた。
「あれ、ツリーさんお帰りなさい。そのストーンスライムさんは?」
「私はあんたのとこの族長届けただけだから帰るわ。」
「そうだったんですか、助かります。
良ければ寄っていきませんか?」
「ツツンもこう言ってるからぁ。」
「……貴方、門番より族長した方が良いんじゃないかしら。」
ツリーを無視して話がトントンと進みツツンは茨を操り道を開いた。
茨を抜けるとツリーからは想像できない程忙しなく働くツリースライムで溢れていた。
「皆~ただいまぁ。」
「お帰りなさい、ツリーさんちょっと通してくださいね。」
「お帰り、ツリーさん。ストーンスライムさんもこんにちわ。」
一匹も足をとめず動き回る姿にスートンは戸惑いながらも隣のツリーを見て働かないよりマシかと思い直した。
ツリーは忙しなく動く仲間たちをボーっとみていた。
「あんたも働きなさいよ。」
スートンはボーっとしているツリーを小突いた。
その瞬間、ツリーが大声をあげて泣き出し、ツリースライム達が不味いとツリーから距離を取り始めた。
「な、何よ!力なんて入れてなかったでしょ?!」
慌てるスートンの隣でツリーは泣き続けた。
すると、大地から1mをゆうに超える太い弦が二本伸びウネウネと揺らめきスートンを思いっきり打ち上げた。
「なんなのよぉぉぉぉぉぉ~。」
スートンは放物線を描きストーンスライムの集落のある方角へ飛ばされていき、それを見ていたツリースライム達はスートンの飛ばされていった方角を静かに見つめた。
「あ~あ~。ツリーさんに手を出しちゃダメだなんて常識なのに。」
ツリーは特殊個体で物理的に攻撃を受けたり精神的に傷つくと近くの植物が元凶を排除しにかかるという能力を持っていた。
今回は足元の雑草が急成長しツリー小突き泣かせたスートンを敵とみなした。
その後、泣き止んだツリーから皆が冷たいとシュンとしてたところを小突かれ泣いてしまったと聞きツリースライム全員でツリーを元気づけた。
会議での話も聞き何か無いかと言うツリーを前に全員が心で「ツリーさんが最強だからそれでいいんじゃ…」と思ったが、またシュンとされては困るので皆必死に考えた。
結局、何も良い案が浮かばず門番のツツンに相談に行った結果。
「要は役に立てばいいのかな?
だったら植物を成長させられる僕たちの特技で食糧難の時に役立てばいいんじゃない?」
全員が「確かに。」と納得しあっさり解散となり、ツリーはまた集落のベスト日光浴スポットでのんびり過ごすのでした。