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半森賢人の槍使い

「神童だ……。」


 ノボラでも有数の拳闘道場、戦時中多くの騎士や術師に徒手格闘指南をしてきた【拳正会道場】。その総本山で、老齢に達していながら未だ筋肉の衰えを感じさせぬ男はレオの乱取り風景を見てそう呟いた。


 最初は基礎鍛錬をじっくりと行っていたのだが、年上の拳闘士はおろか、熟練たる黒帯の打突さえ全てを見切り避け、力のない拳を当てている。レオは反射神経と動体視力が人外の領域にあった。


 ……今は力こそないので、当てたところで倒すことは叶わないが、未だ10代前半。これから技を身に付け、力を付ければどんな拳闘士になるか想像も付かない。


【風神の加護を受けています。きっと良い拳闘士になるでしょう。】


 と、捨てられた子犬のように張り紙のされた箱に入っていた時は、悪質な悪戯かとも思ったが、これは今後再開される拳闘場で王者になることも夢ではない。


「どうもありがとうございました!」


 鍛錬が終わり汗を拭くレオは、出会った不思議な少女……リリアに思いをせていた。


「俺が王者になったら……また会えるかな。」



 ◇  ◇  ◇



「レオ君、……また会えるかな。」


 リリアはノボラの街を去り、次の目的地へ向かっていた。一番近い繁華街は〝鉄鋼と魔導工学の街カマト〟。東西戦争で軍事施設の拠点となっていた街だ。鉄鉱石や魔鉱石・魔石が多く採掘できる鉱山が多くあり、白魔導師とも黒魔導師とも違う〝魔導工学士〟という職人が多くいる。


 田舎村で育ったリリアは基本、師匠お手製の魔道具や一般的な魔道具しか見たことも使ったこともない。どこまで本当でどこまで誇張された噂か知らないが、カマトでは馬でなく、自律駆動する機械が人々を乗せ、食事も魔導機器が作り、人と機械が共存しているという。


 ……足取り軽く歩いていたリリアに不運が襲い掛かる。魔物出現ルートを迂回うかいしたはずの道、そんな森の中から魔物、、、それもおそらくは竜族の咆吼ほうこうが轟く。


 直後、バサリバサリと大きな翼がはためく音がして、黄金の塊とも思える巨躯が森をざわつかせて飛び立った。


「金色竜王……。」


 リリアは一目でその正体を察する。竜族最強の称号をもち、通常の竜の3倍近い巨躯を持つ、全身を黄金に輝かせる最高位に数えられる魔物。そして、その鱗は魔導を弾き返す能力を持ち、呪術との相性が最悪に悪い魔物……。


「ヴラド!」


 リリアはダメ元で叫んでみる、今は日が高く昇る真っ昼間。……宵闇の皇帝は現在爆睡中のようであった。〝いよいよ死にそうになったら、柩を開けろ〟とも言っていた、だが逆に言えばそう軽々に開けば、式契約に影響を及ぼすものなのかもしれない。


 金色竜王は自分に標的を定め、今にもブレスを吐こうしている。いよいよ最悪の選択を迫られたリリアの耳に、頼もしい勇敢な声が聞こえた。


「せぃ!」


 槍の一撃が金色竜王の喉笛をつらぬき、恐ろしいブレスの元となる龍球を砕いて、金色竜王は自らのほむらで全身を覆われ断末魔を残し焼失していった。


「ふぃ。」


 背丈の1,5倍はある槍を構えるのは、耳の長い軽装備の……男なのか女なのかわからない、ただ美しい顔立ちをした人物であった。金色竜王が完全に消滅し、仲間の竜王が追撃に来ないことを確認すると、槍をちぢめ、リリアに微笑を投げかける。



「まねんずや目さ遭ったじゃな、わぁ半森賢人ハンフエルフのルファーさ言うじゃ。昨晩ばげがらあずますぐねぇ気配ばしとったじゃが、攻撃受しがづらねんでへずねぐでやった。」



「………は?」


 精悍な顔つきに優しくも鋭い目付き、耳が隠れるほどに伸びた美しい銀髪……そんな容姿に全く似合わぬ話し方に、リリアはお礼より先に疑問符が出てしまった。


◇  ◇  ◇


 人が住めるよう家のように成長した大樹。そこでリリアは銀髪を短く伸ばしたハーフエルフ、ルファーの家に招待されていた。今一性別の読めない中性的な顔つき、優しい声色、……魔物の最高峰に数えられる金色竜王を一撃で倒す槍の技術。


 明らかに常人ではない、それに目の前にいるのは命の恩人。昼間故ウラドの力を使えないリリアをその槍の一撃で救ってくれた大恩人なのだが……。


「森のあめにけぇ、魔物でねぇべがど心配あんつこんどへぇと昨晩ばげがらおんばんでへれば、もりみなは、なも心配あんつこんどねぇ、言わいだじゃ。すたらば、なも金きらの竜だば出てきたはんで、森の皆もおっかねがってまって。わぁも急いで槍さ持ってはすったじゃ。そいだらまで襲わいでで、まんず、はらねばってまて、そっきばってまて、まねげしなぁ。」


「あの……ルファーさん?」


「なすたじゃ?」


「王国語……しゃべれません?」

 翻訳は書きません!リリアの気持ちをご堪能ください。

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