初体験は強烈に
「アアァアアァアァァリィィィィィスウウゥゥゥゥゥゥ!」
後日、文はアリスを追い回していた。怒髪天を突かんばかりの勢いで怒りに燃える文は、逃げ回るアリスを自らの魔術を最大限にまで活かし、追い詰めることに成功していた。
「ま、待てフミ!なぜそこまで怒っておるのだ!私はいい仕事しただろう!初めてのお前が緊張してやらかさないように!しっかりとコータにアドバイスをしただけではないか!」
「……おかげで……とんだ、とんだ恥かいたわよ……!あんな……あんな……!」
文は顔を真っ赤にしながら電撃を体に纏っている。今にも放たれそうな電撃を前に、アリスは冷や汗を流し苦笑いを浮かべるほかなかった。
文が目を覚ました後のホテルの室内は、まさに惨状というほかないありさまだった。シーツは水浸しになっており、部屋の中に漂う生臭さ、そして髪も体も、汚れに汚れている状態だった。
着てきた衣服は無事だったが、下着はすべて再び身に着けようとは思えない有様になってしまっていた。
あの状態をホテルの人間が見ようものなら、そしてその状態に至るまでの行為を想像しようものなら。それだけでも文は顔から火が出そうなほどに羞恥に染まっていた。
いっそのこと、全てを燃やしてしまおうかと思ったほどである。
起きた時、目を覚ました時に、康太がすぐ横にいたのが、康太が自分を抱きしめながら眠っていたのが、唯一、救いだったといえるだろう。
もっとも、その救いも、部屋の惨状を見てすべて吹き飛んだが。
「ははは、まぁそう悪いことでもあるまい?涙と涎を垂れ流しながらコータに抱き着いてキスをねだっていたではないか」
「っ!?み、見てたの!?」
「っと、なんだ、本当にそんなことになっていたのか……すまん、まさかコータがそこまでテクニシャンだったとは……」
完全に鎌をかけていただけだったという事実を知った、瞬間、文の怒りが暴発し、周囲に電撃がまき散らされる。アリスは悲鳴を上げながらなんとか逃げ回っているが、怒りが頂点に達した文はもう止まらなかった。
こうして、文の初体験は、本人にとっては良い記憶ではないかもしれないが、少なくとも、一生の記憶に残るであろうことは間違いなさそうだった。
「殺す!今ここで死ねアリスゥゥゥゥ!」
「はははは!すまん!本当にすまん!悪気は!まぁちょっとはあった!」
「死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
顔を真っ赤にして電撃をまき散らす文と、笑いながら逃げ回るアリス、そして満足そうな笑みを浮かべる康太の様子がしばらく続いたことは言うまでもない。