絶大過ぎる力
僕が手に入れた能力は強大すぎる。この力の加減を誤れば、国一つを消す事すら出来るだろう。なのでこの力を完全に支配しなければならない。
夜深く、家族も使用人も寝静まった頃、僕は家を抜け出し父の治めるマトニール領のレフォスの街の近くにあるニクの森へ向かった。そこは高ランクの魔物達が蠢いており、一度奥まで入れば一生戻って来れないとまで言われており、そこから『死の森』という別名がついた。そんな森なら力の実験にはうってつけだろう。
森に入るとすぐに魔物が現れた。緑色の毛を持ち獰猛な顔つきをする狼が三十匹ほど、そしてその奥に金色の毛を持った獰猛な顔付きながら、瞳の奥に叡智を宿した狼が一匹いた。茂みに身を隠しつつ、すぐさま【情報操作・神】スキルを発動させる。
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グリーンウルフ ランクD
緑色の毛を持ち、通常の狼よりも毛皮が硬質である。ただその差は雀の涙ほどであり、戦闘能力もそこまで強くない。群れることが多い。
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キングウルフ ランクA
金色の毛皮を持ち、その硬度はオリハルコンに匹敵する。知能指数も高く、戦闘能力もかなり高い。群れを率いる事が多い。個体によっては魔法を使う事もある。
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ランクは恐らくは危険度であろう。キングウルフは厄介だろうが、グリーンウルフは瞬殺出来そうだな。けど数が多いな…魔法で一気に減らすか。
僕はグリーンウルフを一気に片付けるため、茂みから出ていく。狼達から一斉に視線を向けられる。
手をグリーンウルフ達の方に向け、キングウルフを巻き込まないように魔法を使う。
「業火」
グリーンウルフ達は突如現れた業火に飲まれていき、火だるまになっていく。
火が収まるとそこには三十匹ほどの黒焦げの狼の死体が転がっていた。
【業火】中位の炎属性魔法だ。本当は上位魔法を使おうと思ったのだが、僕の魔法は中位でも上位の威力が出てしまうと想像して、中位にした。想像は的中、上位魔法と同等の威力を発揮した炎は狼を丸焦げにした。
「思ったよりは調節効くな。キングウルフも巻き込んでないし」
奥でキングウルフがこちらを睨みつつ威嚇している。襲ってこないのは先程の魔法の威力を見たからだろう。
「さてボス戦といきますか」
そう言ってキングウルフの方に歩み寄ろうとした時、背後から隠れていたのであろうグリーンウルフが襲い掛かってきた。本来なら慌てるべきところだが、僕は特に慌てること無く、くるりと振り返りグリーンウルフの横っ腹に蹴りを入れた。その一撃でグリーンウルフは吹っ飛び木にあたりそれ以降動かなくなった。
それを確認してから再びキングウルフの方へ寄っていく。
「…今度は武術の実験をするか。まずは武器を…」
相手はオリハルコン級の毛皮を持っている。ただの武器では駄目だろう。オリハルコンを超える…アダマントか。形状は刀。よし【鍛冶・神】発動!
僕の目の前に光の玉が現れ、それが形を変え刀の形になる。光が収まるとひと振りの刀がそこにあった。漆黒の刃に日本人にとっては馴染み深い桜の文様が浮かんでいる。【情報操作・神】を使ってみる。
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【神刀 夜桜】 SSランク
アダマントで出来た刀。触れるもの全てを切り捨てる。
絶斬
魔法付与
破壊不能
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お、おう…絶対に切れて、絶対壊せないのか…恐ろしい武器だな。魔法も付与出来るのか。
試しに炎魔法を付与してみると、刀身が赤く染まり炎を吹き出した。
「うお!?」
炎の威力が結構強く、慌てて付与を解除した。しかしかなり使い道のありそうだ。
「ガルルルルルルウゥゥ」
おっと、一瞬存在を忘れていたが目の前にキングウルフがいたんだったな。強い個体を前にしておきながら忘れるなんて…調子に乗りすぎかな。
僕はゆっくりとキングウルフに近づいていく。キングウルフも威嚇をしつつ徐々にこちらに近づいてくる。
「グルァ!」
「ふっ!」
刹那、互いに一気に近づいていく。キングウルフが爪を立て襲いかかってくる。それを横に逸れて躱しつつ、夜桜でキングウルフの首を切り捨てる。オリハルコン級の毛皮も夜桜には勝てず、特に抵抗なく首を落とした。
「…意外と簡単に終わったな。やはり強すぎる…こんなのやだぁ!!」
森の中に僕の叫びが木霊した。
強いねぇ、凄いねぇ。(棒)
次!(・д・)/
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