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短編集。恋愛  作者: 神山 リョウイ
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チューリップの花 三話

病室に着くと綺麗な顔で眠っている優希。

ピッピッと静かに機械がなっている。


寝ているだけだと安心した。

そしてその横には二つの花と二つのカードがあった。



そのカードにはその花の花言葉と幾つかの文が合った。字が汚い。

パソコンではなく手書きで書いてあった。



「……うう、ん」

すっと優希が目を覚ました。俺はすぐに優希の手を握って口を開いた。


「優希っ!!」

握る手に力を込める。彼女はビックリしたように俺を見た。

「どうして……」

俺は今日のクラスのことを話した。優希は泣きながら笑った。

「ごめんね、心配かけちゃって」

「ううん。俺こそごめん何も知らなくて……でもさ、俺気づいたんだよな。変な花が送られてきてからちゃんと言わなきゃって思った。俺……」

「変な花?」

告白しようと深呼吸した時にすかさず優希が質問する。

「うん、チューリップ黄色と白色。あとカードかな。そうこんな感じ」

俺は横にある黒いチューリップと赤いチューリップを指差した。カードもこれと同じ種類の物だった。

そう、同じカードにチューリップ。

「……まさか」

優希を見ると彼女は苦笑いした。

「ごめん、私が送った……これも送ろうと思ってたんだ」

そう言って俺の目の前に差し出した。

そこに書かれた文字はーーー。

読もうとした時、優希の苦しそうな声が聞こえた。



「ゔゔっ……。ごめ……ん、ね」

ぎゅっと優希の手を再び握るも、もう遅い。


「ピーーーッ」


来た時に正常になっていた機械は一つの音を出しただうるさく病室に響いた。


何度呼んでも俺の声は届かない。前に止まった涙がまた溢れ出てくる。

涙でカードの字がしっかり読めない。


目をこすり優希の手を握りながらカードを見た。


【花言葉 愛の告白】赤いチューリップ。

【花言葉 私を忘れてください】黒いチューリップ。

私は涼介が大好きだったよ。

およめさんにして貰おうとずっと思ってた。だけどやっぱり私じゃダメみたいです。

最後に会えなくて辛いけど大好きです。


そして、私のことは忘れて、あなたは幸せになってください。


岸本優希。



そう書かれたカード。俺はぎゅっと握りしめた。クラスメートが後からぞろぞろと来る。


優希は幸せそうに笑って居る。

みんなが集まった時には彼女の体温は無くなっていた。



「優希……俺も大好きだから」


俺は冷たくなった優希にそう言った。




優希が無くなったその日、お通やがあり、次の日にお葬式と忙しくなっていた。

彼女の父親は一人の娘をなくし、ただただ泣いていた。俺と同じようにずっとずっと泣いていた。



優希のお墓が立てられる。

みんなでお参りした後に、俺は一つ花を買って一人で優希の元へ行った。

「俺ばっか貰っちゃダメだからな」

お墓の前にそっと置いた。


紫色のチューリップ。



「優希、これ俺の気持ちだから。花言葉はもちろん知ってるよな?」

そう言って俺は優希のお墓を後にした。






【紫色のチューリップ。

花言葉 永遠の愛。不滅の愛】


俺は貴方を一生愛します。






Fin.






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― 新着の感想 ―
[良い点] 状況描写がしっかりしていて良かったです。 [一言] こういう切ない話は私が号泣してしまうので、あまり得意ではなかったのですが、この作品は短かったので比較的楽に読めました。 これからも頑張っ…
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