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神様が作ったゲームが超クソゲーだった件  作者: 鏡秋雪
守護天使たちの想い
7/11

その守護天使は不在

新章スタートです。

 その後、俺が初めてコボルトと対決した場所の近くの森で爆発を確認し、駆けつけて狩り損ねたブラックデーモンを倒した。

 と、いうわけである。

 とりあえず、街に戻ろう。

 俺は街へと帰る道を歩きながら抱え上げた美少女の表情を見つめた。

 そのせいか、再び彼女のステータスが表示された。



   Viivi Harala

  LV.1

  HP:5/10  DEX:7/10  MP:0/10




 えーっと。ヴィーヴィ・ハララという名前でいいのだろうか?

 彼女から受ける印象としては、何となく生気が薄い。

 儚い。まさに佳人薄命という言葉がぴったりだ。何はともあれ、生きててよかった。


「魔法」

 とりあえずヴィーヴィを回復させよう。

 彼女の回復を願うと、淡い魔法光が彼女を優しく包んだ。



   Viivi Harala

  LV.1

  HP:10/10  DEX:10/10  MP:0/10




 さすがにマジックポイントは戻らないようだ。

 そんな事が出来たら二人で魔法で回復し合って魔法使い放題になっちゃうもんな。

 クソゲーと言えども超えてはならない一線は踏み越えなかったという事だな。

 しかし、相変わらず少女の顔色はすぐれない。

 これはブラックデーモンと戦ったせいですよね?


 もしかして、俺の顔を見たせいで深きものの影響が!

 まさかこの顔にそんな隠しステータスがあるのか?

 俺、もう誰とも会っちゃダメ?

 そんな風に思考が暴走を始めた時、リムが少女を顔を覗き込みながら俺に言った。


「セヴ様。この子、まずいですね」

「やっぱり、深きものの影響が!」

「え? なんですか、それ」

「え?」


 きょとんとしたリムの顔をみると深きものは関係ないようだ。

 よかった。イア! イア! クトゥルフ・フタグン!


「この子、守護天使が居ません」

「え? そんな事あるの?」

 という事はこの少女はチュートリアルも受けずにこの世界に放り出されたのだろうか?

「いえ。そんな事はないはず……」

 リムは顎に手を当てて考え込んだ。


「守護天使がいないと、この子はどうなっちゃうんだ?」

「ちょっと、セヴ様。先に行っててください。ちょっと確かめてきます!」

 そう言い残してリムは元来た道を飛んで戻って行った。


 あの……俺の質問……。いいんですけどね。

 女の子に無視されるなんて日常茶飯事でしたし。

 な、泣いてなんかいないんだからねっ!





 街に到着し、薄幸の美少女ヴィーヴィを宿屋のベッドに寝かせた頃になってようやくリムが戻って来た。

 途中、彼女が目を覚ましたらどうしようかと心配したが杞憂であった。

 ひょっとすると俺が気付かない時に目を覚ましたところ、目の前に俺の顔があって再び気絶という無限ループに陥っていた可能性が微レ存……。

 いや、これは考えないでおこう。


「信じられないですけど、ありました」

 リムが暗い顔をしてキラリと青色に輝くサファイヤのような宝石を掌にのせて俺に見せてきた。

「なに、これ?」

 なんか見覚えがあるぞ。この宝石……。

「これです」


 リムはそう言って、豊かな胸の谷間にあるペンダントを指差した。

 そこには確かにリムが持っているものと同じものが光り輝いている。


「これは私たち守護天使の本体というか、魂のようなものです」

「なるほど、じゃあ、時間が経てば復活して、この子の守護天使に……」

「いえ。もう、この子は自力では戻れないでしょう。それどころか、魂ごと消えてしまうかも知れません」

 リムは悲しそうにその宝石を胸に抱いた。


「ちょっとまって、どういうこと? さっぱりわからないよ」

「ごめんなさい。ちょっと、動揺していて……」

 こんな弱々しいリムを見るのは初めてだ。

 いつも元気いっぱいなだけにそのギャップの大きさがとても痛々しい。

 守護天使の同族意識というものがあるのだろうか? とても悲しそうだ。


「これは私の想像なのですが、彼女の守護天使はブラックデーモンに襲われた彼女を救おうとして盾になったんだと思います」

「なるほど」


 それは充分考えられる。けれどもリムがこんなにもつらそうなのはなぜなのだろう?

 ブラックデーモンを逃がしてしまった原因は俺にあるのだし、リムが責任を感じるような事はないはずだが……。


「それはやってはいけないことなんです」

「それって、どれよ」

「守護天使が自分を盾にして人を守るという行為です」

「は? ちょっと待ってよ。守護天使でしょ。守護っていうぐらいだから何としても守ろうとするものなんじゃないの?」

「私たちができるのは助言を与える事。それ以上の介入は禁止されているんです。やってはいけないことなんです。やってはいけないんです。やってはいけないんです。やっては……」

挿絵(By みてみん)


「リムさん。落ち着いて!」

 呆然自失としてずっと『やってはいけないんです』を繰り返すリムの肩を叩いて意識を俺に向けさせた。

「ご、ごめんなさい」

「最初に話を戻そう。守護天使がいない状態というのはまずいって言ってたよね? このままだと彼女はどうなるの?」

「多分、ずっと目を覚まさないと思います」

 リムは今にも泣きだしそうな瞳をヴィーヴィに向けた。「時間切れまでずっと……」


「じゃあ、守護天使を復活させるしかないな。方法はあるんでしょ?」

「いえ……」

 リムが暗い表情でかぶりをふる。


 いやいや、この程度の救済措置がないなんて、なんというクソゲーだ。とんだ初見殺しではないか。


「俺の魔法とかでも駄目?」

「はい」

「じゃあ、神様に言って直してもらうとか」

 こんなクソゲー、GMコールして何とかしてもらうしかないだろ。

「駄目です。神様が許される筈がありません。この子はやってはいけない事をしたのですから」

 リムはそう言いながらじっと手の平に乗せた青い宝石を見つめた。

「いや、待って。この子の守護天使がこの子を助けたとは限らないんだから、言うだけ言ってみようぜ。助けようとしたんじゃなくって、たまたまブラックデーモンの攻撃に巻き込まれただけかもしれないし」


「あ……」

 リムは自分の口を押えた。「そうですよね。私ったら、勝手な想像で思い込んでました。神様に聞いてみます!」


 リムさんは結構思い込みが激しい。

 笑顔に戻って瞼を閉じて神様との交信を始めたリムを見ながら俺は心の中にそうメモした。

 なんというか、気苦労が絶えないクラス委員長タイプだな。


「あの……」

 リムの表情が再び不安げなものに変わった。

「どうだった?」

「『城に来い』と……。なんだかとても機嫌が悪そうなんです……」

「じゃあ、とにかく行ってみようぜ」

 神様のご機嫌なんか知った事か。


 とりあえず、このヴィーヴィ・ハララという娘の守護天使を復活させなければ。元はと言えばブラックデーモンを逃がした俺が悪いのだし。

 それに『来い』というからにはまったくの拒否ではないのだから何とかなるだろう。

 と、ポジティブに考えよう。

 さあ、みなさんもご一緒に。

 ネガティブからーポジティブへ! スマイル!


「セヴ様? 何を一人でぶつぶつおっしゃってるんですか?」

「なんでもありません。とにかく、城に行こうぜ。案内してくれる?」


 俺、ずっと一人だったから心が病み始めているのかも知れない……。


「はい!」

 明るくリムは返事をして、ふっと表情を緩めていつものような輝く笑顔を俺に向けてきた。「今日は励まされてばかりですね。私」

「いつものお返しさ」

 というわけで、俺とリムは城へ向かう事になった。

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