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神様が作ったゲームが超クソゲーだった件  作者: 鏡秋雪
俺がこの世界に来た理由
1/11

プロローグ

テンプレ作品を自分なりにアレンジしてみました。

よろしくお願いします。


 俺は全力で疾走していた。

 このスピードは現世ではありえないものだ。俺のステータスとスキルによるものだろう。

 疾風のごとく周辺の樹木をなぎ倒し、雑草を風圧で蹴散らして俺は走る。


「間に合え!」


 俺は足に力を込めて跳んで、ブラックデーモンの豪剣が今まさに振り下ろされようとする少女との間に身体をねじ込んだ。

 俺のロングソードがブラックデーモンの豪剣を受け止めると猛烈な衝撃波が辺りの森の木々を激しく揺らした。


「ひっ」


 背中から少女のおびえた呻き声が聞こえた。

 どうやらギリギリ間に合ったらしい。

 元はと言えば俺の慢心で逃がしてしまったブラックデーモンだ。俺が始末をつけるべきだろう。

 この世のすべての悪を体現するブラックデーモンは思わぬ乱入者である俺に咆哮を浴びせた。


 スタン効果。さらにステータス三〇%低下を伴う間接攻撃だ。

 だが、俺には問題ない。なぜなら、例え五〇%ダウンしたとしても余裕で勝利できるほどの実力差があるからだ。

 そして、スタン効果すら俺の持つ特殊技能である『神の祝福』によって無効化されている。


「消えろ」


 などという寒い決めセリフすらも必要ない。

 俺は軽く無造作に初期装備のロングソードを振った。


 ブラックデーモンは己に何が起こったか理解できないようだった。困惑した表情をした後、俺が振るったロングソードの軌跡がその身体を両断し、派手な死亡エフェクトと悲鳴のような絶叫を周囲に散らしながら消えて行った。


「すごい……」

 鈴を優しく奏でたような美しい声が背後から聞こえた。

「じゃ、俺はこれで」

 そう言い残して立ち去ろうとしたが「待ってください!」と、引き留められた。


 だが、俺は立ち止まらない。別にヒーローになりたくて助けたわけじゃない。

 この世界に来て初めて見かけた人間が死にかけていたからだ。しかも、襲い掛かってるモンスターが自分の手落ちで逃がしてしまった奴だ。このまま少女が死んでしまっては俺が殺したようなものだ。


 このまま去った方がいい理由は他にもある。

 お互いに顔を合わさない方が幸せなのだ。

 なにしろ、今の俺の顔は百人が見たら百人が嫌悪感を抱くに間違いないほど醜いのだから。

 どれくらい醜いかと言えば、俺を見た後、インスマス住人がハンサムに見えてしまうほどなのだ。

 これが来世の顔だというのだから、この世界はまったく救いがない。来世の俺はアーカムに生れ落ちるのかも知れない。


「お願いします。動けないんです。あたしを街まで連れていってください」

「ああ、それはブラックデーモンのスタン効果だから五分もすれば……」

「違います。歩けないんです。はじめから」

 説明しようとした俺の言葉をさえぎって少女は言った。


「なるほど……」

 俺の足元に転がる破片は元々車いすだったらしい。

「命を助けていただいたうえにお願いするのは本当に申し訳ないんですけど」

 声が徐々に細くなっていく。

「わかった。だが、俺の顔は相当ひどいぞ。飛んで逃げ出すぐらいにな。覚悟しておけよ」

 仕方なく俺は振り返り少女に顔を向けた。


 力なくぺたりと座り込んでいる守護天使と見間違えるような美しい少女が俺の顔を見上げて絶句していた。


挿絵(By みてみん)


 長い金髪がわなわなとふるえる彼女に合わせて小さく揺れ続けていた。やがて大きく見引かれた薄いコバルトグリーン色の瞳の光が失われていくのがはっきりと分かった。

 少女はパタリとその場に崩れ落ちた。


 やれやれ。やっぱりか。

 俺は大きなため息をついて、少女を抱き上げた。

 念のために彼女のステータスを確認する。




   Viivi Harala

  LV.1

  HP:5/10  DEX:7/10  MP:0/10




 この世界に来たばかりのニュービーに間違いない。

 とりあえず街に連れて帰ろう。そして、適当な宿を借りて置いておけばいいだろう。 

 俺が駆けつけなければこの少女は死んでいたに違いない。

 そうしたら、彼女はこの美しい姿で来世生まれてくるわけだ。

 それは俺にとって、とてもうらやましい事であった。


 死にかけてる現世での俺も、この世界で死んで生まれ変わる来世の俺も、こんな不細工な顔なのだから。

 元の世界へ帰りたくないし、未来の世界も行きたくない。俺は本当に中途半端で行き場がない。

 とりあえず、あと十カ月。タイムリミットまでこの世界に居続けよう。

 少なくとも今の俺は現世でも来世でも得られない強大な力を持っているのだから。

(そう言えば、この子も死にかけているって事だよな)

 俺はそう考えながら彼女を抱きかかえて街へと歩き始めた。


(死にかけの人間を集めた世界……か……)

 そして、思い返さずにはいられない。今、俺がこんな奇妙な状況に陥る前の事件を……。

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