3, 最善の対処法は、最悪をもたらした
瞳を開く。
そこは、中性の映画などによくある、いわゆる決闘場のような場所だ。
「やぁ」
目の前には、クリアさん。
「ども」
軽く会釈をする。
「さぁて、早速だけど始めよっか」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!」
「?どうしたの今更?まさかここにきて怖じ気づいたとか――」
「あんたの言うことは何でも聞く!だから、今回の件は許してくれないか!?」
「……!」
この仮想世界の映像は、現実世界にもモニター越しで映されている。しかし、仮想世界の音声は伝わらないそうなので、俺は交渉を試みた。
「俺には力を使いたくない事情があるんだ!それがどんな事情かは説明できないけれど……この前の無礼は詫びる!奴隷にでも何にでもなるから、ここは穏便に事を済ませてくれないか!?」
「……」
クリアは、腕を組み、俯いている。俺の条件を呑むかどうか考えているのだろうか?
「はぁ」
そして溜め息を一つ。
俺の額から汗が伝う。
「君、何か勘違いしてるみたいだけど、私は君をコテンパンにしなきゃ気がすまないの。それに、私の言うことを聞くなんて当たり前。」
「…っっ!!」
「私はね、気に入らないの。あんたみたいなどこの馬の骨か分からないような男に、私の事を否定されたのが」
否定。
きっと、暇だ、とか時間の無駄だ、等という俺の発言を、彼女を否定したのだと受け取ったのだろう。
「いや、あれは別に悪気はなくて…」
「そんな醜い言い訳聞きたくない。君が強かろうが弱かろうが、私は君を圧倒的な"力"でねじ伏せないと気がすまないの」
交渉は最早、決裂。
打つ手の無くなった俺はそこに立ち尽くすしかない。
「…そうね、君が従天使の名前を教えてくれたら、考えないこともないわ」
それじゃあ、意味がない。
「それは……ダメだ」
「あっそう。ほんと…」
クリアさんはこめかみを押さえる。
「気に入らない!!」
あまりにも迫力の大きいその睨みに、俺は一歩後ずさりした。
これは、まずい。
状況は更に悪化してしまった。最早交渉は不可能。
「完膚なきまでにコテンパンにして、あんたは私の奴隷にして、毎日殴ってやる!!」
そ、それはそれでなんか…いい。
……はっ!!違う違う!!俺はMじゃないぞ!!想像したからって良いとか本気で思ってないからな!!
って、そんなことを考えている場合じゃない。
どうする。
俺にはもう戦うという選択肢しか残されていないが、能力を使うわけにはいかないし……。
「神に遣えしその御力を、今一度我に分け与えたまえ」
クリアの右腕のブレスレットが、輝く光る。
「その名を『サンダルフォン』!!」
その光が辺り一帯を包み込む。俺は腕で顔を覆い、光を塞いだ。
……おさまったか。
ゆっくりと視界を広げ、クリアさんを見た。
彼女の回りに六本の剣が宙で回転している。
「さぁて……私は終わったよ?今度は君がしなよ」
「……っ」
こうなったら、不完全詠唱で、一か八かの勝負に出るしかない…!
「神に遣えしその御力を、今一度我に分け与えたまえ……その名を…」
「やっと言う気になったか…さて、見せてもらうよ、君の力」
…………。
そして、詠唱が途切れたことにより力が暴走。左目から光線が放たれる。…右下の方向に。
ドォォォン!!
「っ!?…まだ、詠唱は終わってないはず…!」
「くっ、当たらなかったか…うっ!!?」
なんだ、目が…熱い!
するともう一発光線が放たれる。今度はクリアの頬を掠めた。
「いっ…!…な、なんて速さ…!?」
「はぁ…はぁ…ぐっぁ…!!」
また…だ!!
「ちっ、ほんとムカつく。不完全詠唱で私と戦うっての?そこまでして従天使の名前を隠すなんて…意地でも聞き出してやる!!」
クリアは三本、剣を俺に向かって放った。
蛇のように入り乱れる剣は、軌道の予測を困難にさせる。しかし俺には、避けるなんて判断は出来ない。今はただ、左目が熱い。
すると次の瞬間、再び光線が放たれる。軌道は…丁度クリアの方向…!!
これは…勝ったんじゃないのか…?
この展開は予想外だが、結果オーライだ。
そして光線はそのまま光の速度でクリアに放たれ、貫通――
しなかった。
「はぁっ!!」
彼女は素早く両手に剣を持ち、二本の剣で光線を切り裂き防いだ。
「な……!!?光の速さだぞ……?!?」
そんなデタラメな……!!
「ふぅ、私をあんまり甘く見ないでね。あんたたちとは出来が違うから」
次の瞬間、上空から三本の剣が降り注ぐ。
「っっ!!」
何とか体を反応させて避けようとしたが、一本が右足に刺さってしまう。
「くっ……!」
痛みはもちろんないが、仮想世界での決闘は、現実のダメージを忠実に再現しているため、ほぼ動かないだろう。
「さぁて、今度はこっちの番よ!!」
クリアはもう一本の剣を俺に向けて放つ。
俺は左足を使い、すんでのところで避ける。
「まだまだ!!」
かわされた剣は、そのまま軌道を変えてもう一度俺に向かってきた。
「!!」
俺は反射的に腕を前に差し出す。
痛々しく、左腕にはぐさりと剣が刺さった。
「くっ…厄介だ…」
仮想世界で痛みを感じないからこそ出来る芸当であり、現実で喰らっていれば即死だっただろう。
「左腕を犠牲にした…か。でももうあと手足は一本ずつしか動かないと思うよ?」
手に持つ二本の剣をクルクルと回転させて遊んでいる。
本気を出していないだけなのかは分からないが、どうやら遠隔操作した先程の四本の剣はもう動かせないようだ。
動かせれるならば、その剣で俺の不意をついて瞬殺だろう。
俺はゆっくりと立ち上がる。右足と左腕にうまく力が入らない。
「ねぇ」
「…!なんだ?」
「君、不完全詠唱なんてしないで、さっさと力をちゃんと使いなよ。このままじゃ普通に負けるよ?まぁ、使っても負けるだろうけど」
「…それは嫌だ」
「はぁー…なんで?何でそこまで教えたく無いわけ?理由を教えてよ」
「それは……人生が終わるからだ」
「……はぁ?」
彼女は心底訳がわからないというように顔を歪めた。そして呆れたようにため息一つ。
「あっそう。でも今から私に負けて、一生私の奴隷になってひどい目に合うんだから人生終わるのと変わんないと思うんだけど?」
「いや、それはそれでまた別の幸せが……ってはっ!!?ち、違う違う!!違うぞ今のは!!」
「……あんたって実はドM……?きも」
「待ってええええええ!!!!」
その時、ビーッビーッと警告音が鳴り響いた。そして仮想世界が赤く光る。
「わっ、な、何だ!?」
「これは一体……?」
すると研究員さんの声が聞こえてきた。
『君たち!!まずいことがおきた!!何者かがこのプログラミングをハッキングして乗っ取ったんだ!!』
「は、ハッキングゥ!?」
『このままでは仮想世界もろとも破壊されてしまい、君たちは現実世界に意識を戻すことが出来なくなる!!』
「なっ……!?」
「……っ!!?」
クリアさんの顔が青ざめている。
『僕には君たちの声が聞こえない。だから言えるのは一つ。仮想世界の内側からありったけの力を使ってプログラミングを破壊してくれ!僕もハッキングを阻止するよう頑張る!……プツッ…』
連絡は途絶えた。
「……」
「……」
ビーッビーッと警告音だけが鳴り響く。
俺とクリアは、顔を見合わせた。
「と、とにかく、何とかしないと……」
クリアは俺のもとに近付いてきた。え、え、何?もしかして殴られたりとか――
いや、剣を取りに来ただけみたいだ。
クリアが剣に触れると、命が宿ったかのように光り、宙に浮いた。
「出来るだけ……破壊すればいいのね」
正直、何とかなるんじゃないかってぐらい、クリアさんの顔は自信満々だった。
「ふぅー……」
彼女が息を整えると、六本の剣が彼女を囲うように円になり、回る。
「ちょっと、離れててよ」
「あ、ごめん……」
「ふん……」
俺は言われた通りに、彼女から距離をとる。
「すぅぅ……はぁぁぁ!!!」
クリアの喝と同時に、彼女を取り巻く剣が光を放った。
バチッバチチッ
すると、剣が電気のようなものを帯び、回転を速める。
「『天の幽閉所』召喚」
次の瞬間、上空に放たれた剣が円を描いたまま、地面へと突き刺さる。
一つ一つの剣が電気で繋がり、ブラックホールのような、不思議な空間を造り出した。そこから現れたのは巨大な牢屋。その中に閉じ込められるのが何なのかは分からない。
「『楽園への解放』」
牢屋の天井が開く。
そこから現れたのは、巨大な一本の腕。その大きさは、牢屋の出口よりも遥かに大きいものだ。
どうやってこの巨大な腕をあの牢屋に納めていたのかは分からないが、それぐらい巨大だ。
その巨大な腕は不思議な光を放ち、手のひらに収束。一つの球となった。
そして、しばらくすると、収束が止み、球が地面に向かって放たれた。
ドゴォォォォォォッッ!!!
「うあっっ!!?!?」
爆風はとてつもないものであり、俺の体は簡単に吹き飛んだ。
威力も十分。いや、十分すぎる。これなら脱出は余裕だろう。
土煙が止んでいく。
「「え……?」」
地面は、何もなかったかのように無傷。
俺とクリアは驚愕した。
『二人とも!大変だ!仮想世界の壊滅が始まった!!この世界が無くなるのも時間の問題だ!急いでくれ!!』
研究者の声が再び聞こえてくる。
急いでくれ、か。
なんて他人事なんだろう。いや、実際そうなのだが、ハッキングなんて簡単にされるなよ、なんて事を考えてみたり。そんなことに起こっても仕方がないのは確かだ。
すると空が崩れていくのが分かる。初めは一点から崩れていっているのだが、その範囲は段々と広がっている。
「っ……まずい!!」
俺は流石に焦り、ちらりとクリアを見た。
「……」
クリアは、その場に座り込んでいた。
その絶望したような表情から分かる。きっと、自信を持って放った一撃がなんの救いにもならなかったことに、絶望しているのだ。プライドの高い彼女のことだ。十分あり得るだろう。
空を見る。もう半分ほどまで広がった破壊。
「まじで……やべぇ」
やるしか、ないか?
力を使わなければ確実に脱出できない。しかしそれで脱出できたとしても――いや、そんなことはもうどうでもいい。
クリア・アマネスの放った渾身の一撃でもびくともしなかったこの仮想世界が、俺の力で破壊できるか分からない。けど、やるしか……ない。
「ふぅーー」
大きく息をはく。
「神に遣えしその御力を、今一度我に分け与えたまえ!!」
「……!君……」
「その名を」
今は俺だけの命が危ないんじゃないんだ!!
「『ルシファー』!!!」
左目が光る。力の発動と同時に、意識を左目に集中させる。
光の球が生成。
「あっっづ……!!」
あっという間にピンポン玉の大きさに。しかしなんで痛みがあるのだろうか……?
……まだだ。こんなものじゃ破壊は出来ない。もっと……もっと大きく。
「ぐ……ぐぁっ……ああぁ……!!!」
クリアは今、どんな顔で俺を見ているんだろうか。きっと、避けずんだ目で見ているんだろうな。
「ああああああああ!!!!」
痛い、痛い痛い痛い痛い。なぜ痛みがあるんだよ!!?そんな事を思いながらも、光の球の大きさはもうサッカーボールぐらいになっている。
でも……まだだっ!!
破壊はどれぐらいになっているのだろうか……。
そんなことはもう分からない。
きっと、俺の顔面は血まみれだろう。
球の大きさは……分からない。けど、きっと大きいだろう。
「いっ……け…」
明けの明星。
俺は上空に向けてそれを放った。意識は――無かったと思う。
◇◆◇◆
それから目を覚ましたのは研究室のベッドの上。
研究員さんが心配そうに俺の意識回復を喜んでくれた。
クリアたちは先に帰ったみたいで、俺の従天使の存在について何か言っていたかは分からない。けど、研究員さんの反応を見るに、研究員さんには言っていないみたいだ。
でも、まだファンクラブに言った可能性がある。
俺は寮への帰り道に一人悶々と考え込んでいた。
研究員さんに、仮想世界の壊滅時にモニター越しでどうなっていたかを聞いたのだが
「えっと、あの時はモニターの映像がブレだして、完全に映像が途切れた瞬間にハッキングが分かったんだ。仮想世界の情報が何も伝わらなかったから焦ったねあれは」
焦ったのはこっちだっつの。なんて思ったり。
とにかく、これで外の世界ではあの時の情報が無かったため、俺の従天使の存在は漏れていないはずだ。
つまり、現時点ではクリアのみがこの事を知っている。
……口止めはしてないし、いつバラされてもおかしくない。もうバラされてるかもしれない。
「い、急いで聞いてみよう」
夕食の時食堂で聞いてみるか。
◆◇◆◇
「ライヤ君大丈夫!?」
「わっ!?な、何だよ急に……」
ミチアが心底心配そうな顔をして俺の肩を掴んできた。俺が食堂に入った瞬間に。
「クリアさんから聞いたよ!仮想世界で閉じ込められかけたって……」
「何っ!?」
まさか……あいつ…バラしたのか!?
俺は周りを見渡し、クリアを探す。しかしどこにも居ない。
「なぁ、クリアはどこにいるんだ!?」
「え?えっと…さっき夕食を食べ終えて右の方に行ったから…お風呂かな?」
「風呂だな!?わかった!!」
「えっ!?何が!?何がわかったの!?」
俺はミチアの言葉に耳もくれず風呂場に向かって走った。
食堂から風呂場までの距離は歩いて五分。走ったら三分もかからないだろう。
…居た!丁度風呂場の入り口手前ぐらいに居る。
隣に女子生徒二人と並んで入っていった。
よし…問い詰めてやる!!
はぁっ!はぁっ!
あともうちょい!
勢いよく走って加速した体を、両足で踏ん張って急ブレーキ。綺麗に止まった目の前には女風呂。
ぐへへへ…ここに居るんだなもう逃げ場は無いぞ…ぐへ、ぐへへ……あれ?なんか俺間違ったことをしているような…?
って、そんな場合じゃない!今は人生が懸かってるんだ!!
意を決して俺は|開けてはならない(女風呂の)扉を開いた。
そこにはもちろんクリアさん居たよ。
裸だったけど。
裸だったけど。
そこで過ちに気付く。
ああ
風呂から上がるん待ち伏せすれば良かったんや…良かったんや…良かったんや…(エコー)
「で?なんか用?」
そのあと、もちろん俺は女子たちにフルボッコされたあと晒し者にされ、教員に謹慎処分くらったあと、学園で有名になり(もちろん悪い意味で)泣きながら自販機の隣にあるベンチに座っていると、クリアさんがこうしてやって来てくれたのだ。
「あ、わざわざ来てくれたんだ…」
「はぁ?君が用あるって行ったから来たのに何それ。無いんなら帰るけど」
「ああああ待って待って待って待って!」
「うるさいから黙ってくれる?」
「あ、ハイ…」
恐らくまだお怒りになってらっしゃる。
まぁ…そりゃ怒るよね?
だって俺が入ったときにゃあ、あられもない姿のクリアさんが…ブフッ、思い出しただけでも鼻血が出そう…
「で?何の用なの?」
「あ、えっと、仮想世界のことなんだが…」
俺はキョロキョロと周りを見る。よし、誰もいないな。
「その、俺の能力のこと…みんなに言った?」
「……」
彼女は腕を組み、目をそらした。
この反応…まさか…!
「そうか…」
「はぁ、ほんとあんたムカつく」
「え?」
「あんたの従天使を知っていて、私がそれを良いことに学園に言いふらすって思ってること事体が腹立つ。どこまであんたは私を見下せば気がすむの?」
「えっ、いや、そんなつもりは…」
「それに、世間に知られたらあんたの人生終わるってことぐらい私も分かってるよ。そんなことしてあんたに酷い目に合わせても何も嬉しくない。むしろ、あんたの方が凄い従天使なのがムカつく」
「…プライド、高いんだな」
「はん、あんたのお陰であの時助かった時点でプライドなんかズタズタに切り裂かれたけどね」
「あの時って…仮想世界で破壊を阻止した時か?」
「何それ嫌み?ほんと、いい性格してるね君」
「あ、いや、そういうことじゃ無くてだな…ええと…」
あたふたしてると、クリアさんがフッと笑った。
始めてみた彼女の笑顔。自分の自慢話をするときのような誇らしげに笑う顔じゃなく、楽しそうな、心からの笑みに見えた。
「もう一度確認するけど、私は今回の件は誰にも話してない。そしてこれからも話すことはない。オーケー?」
「お、おーけーおーけー」
「その代わり」
ビシッと人差し指を俺に差し出してきた。
「黙ってあげる代わりに、君はこれから私の奴隷。何でも言うことに従いなさい。それと、私が仮想世界で無様な姿を見せたことは他言するな。君も忘れろ。いい?」
「ど、奴隷!?てゆか、無様な姿って…?」
「……っ!私が仮想世界の破壊を防ぐことが出来なくて呆然としてたことよ!!」
クリアさんは顔を真っ赤にして言ってきた。プライドの高い彼女にしたら、黒歴史なのだろう。
「もし言いふらしたり、奴隷にならなかったら私もバラすから。いい?」
「は、は、はいぃ…!」
もしかしたら、とんでもない人に弱みを握られたのかもしれない。
「じゃあまず、コーンスープ奢りなさい」
「ええっ!?」
「何?ご主人様の命令が聞けないってゆーの?んん?」
「はいクリア様直ちにお買い上げいたしますぅぅぅ!!」
やばい。これは人生終わったのとおんなじじゃないのだろうか…。
そういえば…
「な、なぁクリアさん。今回の件のこと、ほんとに誰にも言ってないのか?」
「何?まだ嫌味を言うの?」
「いや、ちがくて…その、一緒に来てた生徒にも知られてないのかなって…」
「ああ、あの人たちは何が起こったか分かってなかったみたいだよ。研究員が混乱させないようにうまく誤魔化したみたいで…」
「そうなのか…」
じゃあ、俺とクリアさんしか今回の件何が起こったか知っていないということだ。
そうだとしたら何で…あいつは知ってたんだ?
「…ねぇ、そのクリア『さん』っての止めてくれる?」
「え、ああ、じゃあクリア様?」
「バカなの?死にたいの?死ねば?じゃあね」
「え、なんかごめんなさい」
はぁーとため息。
「普通にクリアでいいよ。君の名前は?」
「ライヤ…」
「ふぅん。ライヤね。これから奴隷として従えるんだから名前ぐらいは覚えといてあげる」
「あ、あざす…」
「んで、いつになったらそのコーンスープ渡してくれるわけ?」
「あ」
忘れてた。
「ふん。じゃ、私戻るから」
「ああ、………おやすみ」
「……ふん」
彼女は鼻を鳴らして去っていく。
嫌われ度Maxだが、仲良く出来たらいいなと思う。